第10回公開授業
  
情報科「Power Point によるテーマ別
グループ発表」

研究授業  
意見交換会  

平成14年9月12日(金) 第5〜7限
羽衣学園高等学校 http://www.hagoromogakuen.ed.jp/
2 年選択情報科
授業者 津田 明・大野高士・ 熊谷紀子



研究授業 情報科「PowerPointによるテーマ別グループ発表


(単元案・本時の授業案・評価シートが含まれてます)


 10回目の授業公開キャラバン。羽衣学園では,「情報科」をすでに高校1年の段階で必修科目に設定しています。1年次には,ワープロ,表計算など基本的なソフトの利用について学習しています。公開授業では,1年の情報科につづく,2年次の選択科目としての「情報」です。大野先生(教科は体育!)と助手の熊谷先生の3人で担当しています。2年次では,プレゼンテーション,コミュニケーション能力の育成を目指し,6月から12時間の単元を設定しています(指導案の中の単元案をご覧ください)。本時はそのまとめとなる,発表会の時間でした。 

 

 

 
 
 まず,津田先生による授業の概要についてのプレゼンテーションからはじまりました。生徒にとっては,プレゼンのお手本になりますし,参観に来られた先生にとっては,本時までの取り組みがわかる,いい取り組みだと思います。

 続いての生徒による発表会では,グループごとに順に発表していきました。配布された評価シート(指導案の末尾にあります)では,構成・シナリオ,デザイン・アニメーション,発表者の説明と3つの観点で,3段階の相互評価をするようにしています。参加の先生方も生徒の発表を見ながら評価に参加していました。発表後の質疑応答の場面では,参観の先生方から,発表の仕方,内容について鋭い指摘を受ける場面も。皆さん,緊張して取り組んでいたようです。

 プレゼンのテーマはさまざま。学校・クラブ活動の紹介,修学旅行先のオーストラリアについて,日米の高校生が身の回りの安全意識について国際交流する「安全プロジェクト」とも関連させた食品の安全性,ネットワーク犯罪,2001年9月11日のニューヨークで起きた同時多発テロ事件について調べたグループもありました。

 

 
 
4名で1グループを組みますが,プレゼンテーションの作成までは1人1人,それぞれに調べ,まとめる時間を設定しています。1人が1作品を自分で作りあげる過程を通ってから,グループの作品にまとめるようにすることで,1人1人がプレゼンテーション作品をつくることができるように配慮されています。その一方で,グループとして作品をまとめる時間が足りなくなってしまい,重複した内容をつないだままのグループも。個人の調べ,プレゼン作成の前に,グループとしての作品の取り組み方,内容の分担について話し合う場面が必要だったのかもしれません。


 

授業者のコメント

 パワーポイントを使った授業は初めての試みでした。1年次の情報科でワープロ,表計算程度はしてきているので,2年目にはプレゼンテーションをしてみようということで挑戦してみました。私自身,パワーポイントの使い方を学びながら指導することになったのですが,自分で疑問に思ったところをすぐに生徒の指導に役立てることはできました。反面,生徒は教師の取り組みを見ながら,理解していく場面もあり,ゆっくりしたペースで取り組んでいくよう心がけました。
 また,作った作品を自分のパソコン上から,サーバに保存することなども,試行錯誤で右往左往しながら取り組んでいるうちに,クライアントとサーバの感覚などを身につけさせる機会にもなったようです。

 生徒からは,高1高2の情報科が面白かったから高3でもやってみたいという声もでてきています。今後は,マルチメディア作品の作成など,より高い課題に挑戦できないか検討中です。教科との連携や総合との結びつきも考えてますが,情報科として何をやるべきか,考えているところです。

 

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意見交換会

司会:長尾 尚 (信愛女学院)
 提案者:津田明(羽衣学園)
大野高士(羽衣学園)
熊谷紀子(羽衣学園)

記録:関西大学大学院 稲垣忠

 
  意見交換会では、授業前にこのホームページ上で実施した「VB」での話し合いの記録をもとに議論をしました。課題設定の仕方,授業時間,グループ分け,評価と4つの観点からあらかじめ意見がでていたため,その意見と実際の授業の感想を交えながら,掘り下げた話し合いができたと思います。また,今回は企業の方からも活発なご発言があり,プレゼンテーションをする時にどんなところがポイントになるか,新しい視点からご意見をいただくことができました。


(Virtual Brainstorming:授業前)

(Virtual Brainstorming:授業後)



課題設定について


Q: 課題設定の時点で,「自分たちはこんなことを伝えたいんだ」という意思表示はどのくらいあったのでしょうか?(吉澤:キャリアリンク)

安全プロジェクトのをみていたんだが,課題が浮かばなかった。「カタイ」テーマばかりになってしまう。生徒に聞くとサッカーばかりになってしまう。サッカーの選手の写真や記事をいれるのは簡単だけど自分のものにはならない。著作権(肖像権)の問題もある。写真や記事の貼り付けを避けるとなると,逆にテーマ設定が難しくなった。そこで学校紹介などを投げかけると,それに飛びついてくる生徒もいた。(津田)

逆にサッカーから国際理解とか歴史とかに広げていくとか,調べ学習の題材としては取り上げるのも面白いのでは?自分たちの主張,意見をつくるのには向かないかもしれませんが。10班ともサッカーでも,サッカーの何を調べるのか,深められる視点を設定していった方が,生徒のやる気を引き出す方向にもっていきやすいのではないでしょうか?「ただサッカーを発表します」だけではなく,そこから絞り込ます教師の投げかけがあればいいのでは?(飯田:四条畷学園)

Q:それではサッカーでどんなテーマが考えられますか?(長尾)
・ボールができるまで。
・昔は何を蹴っていたんでしょう?
・実況中継の比較
・ホストになった村と国との関わり
・ユニホームの色やJリーグのチーム名についてとか
・他のスポーツ(野球)との比較。今時のお父さんは?
・文化交流としてのサッカー
・蹴鞠とどっちが古い?蹴鞠はなんで流行らなかった?

盲導犬を発表した生徒が発表した理由を言ったら,他の生徒から拍手があった。そういう課題に対する思い・こだわりがしっかり伝わっていたのでは?課題を制限するなら掘り下げを考える必要があるけど,しないとするなら,自分の体験として語れる部分がほしい。(長尾)

食品の安全についての発表の生徒は,論理構成がとてもしっかりしていて,結論として「私は食べたくない」という意思表示をしっかりしていて感心した。では,「私はどうしたらいいか?」までもっていくことができれば,総合学習としてもいけるだろう。(奥田:大阪国際)

オーストラリアの中では4班が絵がたくさんあって関心の高さがうかがえた。「自分たちはこう思っていたんだけど・・・」といった物語性があるとひきつけやすい。「〜〜〜を調べてみました」ではじめてしまっていて,「なぜそれを調べたの?」が見えにくい発表が多かった。構成の工夫が必要ではないか。(長尾)

授業時間について

高3ではじめて情報科に取り組んでいる生徒は高2に比べると遅れている部分もある。高2では余裕があると思っていたんですが・・・。「この時間,何やってるのかわからない」といった声も聞かれ焦った。(津田)

Q:すべて操作を覚えてないと指導できない,ではなくて「だいたいでええやん」はすごく面白いと思う。その辺については?(長尾)

ビジネスソフトについてはきっちり知っておかないとという意識もあります。けど,ソフトは何でも目的が決まっている。パワーポイントならプレゼン。逆にいうと,プレゼンはパワーポイントに決まってるわけでもない。「プレゼンテーション技術」の一環としてパワーポイントも指導していけばいいのでは。今日の発表でも,パワーポイントができていても発表ができていない生徒もいた。(津田)

Q:今日のプレゼン自体に対して思うところはないですか?(長尾)

1枚あたりの字が多くなってしまう。作品づくりに意識が向いてしまい,しゃべり方リハーサルにもう少し時間をかけてみては?書いてあると安心して読まずにすぐ次にいってしまう場面もみられた。(村上:精華高校)

インストラクターの視点からみると,こちらのに正面向いてきちんと話をしているのは1組しかなかった。プレゼンテーションの本当のねらいは何?壁新聞でも別によかったのかもしれない。枚数とか効果は使わないとか,そういうルールを設定しておく必要があるのでは。導入の時点ですべての効果をみせてしまわないで,伝え方を重視してみてもいいのではないか?(阿比留:キャリアリンク)

Q:これからの流れ。今回のこの発表を今後どう変えていけるのか。(宮浦:須磨学園)

前回みせていただいた時の練習風景をみて,教えなければいけないことがいろいろあるな,と。オーストラリアのことを調べた生徒も前回指摘したことに対して答えを用意していた。誰に対して何を思ってもらいたいのか。指導のポイントをきっちりおさえることでこの1週間で変わったチームもいくつかあった。(奥野:キャリアリンク)

Q:情報の授業での「プレゼンテーション」力を鍛えるべき?それともパワーポイントを使いこなすことを重視すべき?(長尾)

ほんとはどちらでも重要。プレゼンテーションは要素が多い。情報の授業の中だけですべてをフォローするのは難しい面もあるかもしれない。情報を選びとり,構成していくツールとしてパワーポイントを活用してみてほしい。(市川:信愛女学院)

国語の先生がやっていくべき部分も大きいのでは?テーマを決め,調べ,まとめていくといったものの考え方。他教科との連携を考えた上で,情報科を位置づけたい。先生に対する評価の問題。そのプレゼンが誰を対象に伝わったのか,しっかり評価していく必要がある。(奥田)

誰のためにプレゼンをするのか。ほんとうに対象を考えた文脈づくりをしてもいいのでは?たとえば学校紹介をして,参観に来られた先生方にあとでどのくらい伝わっているのかテストをするとか。(稲垣)

課題に取り組んだ最初の時点では対象が明確でなかった部分もありました。直前に奥野さん(=プレゼンのプロという設定)に見てもらったところがすごく刺激になっていた。(津田)

小学生のプレゼンの授業をみてきたんですが,集めて,調べてきたことをたった3枚に集約していた。結論,みたこと,自分たちにできること。1枚1枚つくってはチェックして発表の練習をしてた。小学校,高校に限った話ではないし,学年をこえた系統性を考えることも必要になってくるのでは(吉澤)

聞く人が何に驚くかわからない。オーディエンスの反応からグレードアップしていくような繰り返しは必要だと思う。それと,「プレゼン上の文字を読ませてはいけない」演出上「読ませよう」とする部分と,しゃべりながらまとめとしてプレゼンを使うやり方とは対照的だった。(長尾)

グループ分け

Q:1人1人つくってつなぎあわせるのは難しいのでは?(長尾)

しゃべったこともない子も含めて機械的にグループ分けした。それも1つの出会いの場面として活かしたい。4人組ませてみると「この子のを中心にしてやろう」といった場面もあった。そういうこともあってまずは1人1人つくり,それを持ち寄ることを考えた。選択の時間なので,いくつかのクラスが集まっていることも考慮した。(大野)

リスニングの時間などは知らない子どうしで組ませると面白いことがある(米田:羽衣学園)

現代っ子は知らない場でのコミュニケーションが苦手。知らない子で組ませるのも大事では(吉澤)

Q:評価とグループ分けの関連は?役割分担をもたせることもできたのでは?(長尾)

グループを組んで1つのものをつくった時に,何もしていない子がでてしまうのが困る。個人の作品も評価することを指示しておいた。(大野)

評価について

Q:津田先生のおっしゃるように「楽しい教科として評価を緩く?」という部分と「評価は評価としてしっかりやるべきだ」みなさんはどちらの考えに近いですか?(長尾)

その場その場の適切な言葉がけと自己評価を組み合わせることで納得のいく評価になるのでは?(稲垣)

なんで生徒が評価が嫌いか?承服できないからじゃない?納得できる評価をしていかないと。情報科はいろんな教科にわたる評価観を見直していく突破口になるのでは?ペーパーテストに客観性はあるけど,それは間にトンネルがある。レポートの提出だって誰に向けて書いてるのかわからない。そういった「合格ライン」をイメージした評価ではなく,当事者意識をもった「思いが伝わる」実感を評価していく方向。「再チャレンジしたくなるような評価」(小林:清教学園)

難しいけど絶対評価の基準をしっかり確立していかないといけない。国際社会に対しても。ペーパーは半分くらいであとは形成的,プロセスの評価をしんどくてもやれないか。「相手(評価者)がみえる評価」が大事。それが授業の評価にもつながってくる。(奥田)

絶対評価に二の足を踏んでしまうのは,評価自体の難しさがある。評価しにくい,どうやったら評価できるのか方法を教えてほしい(津田)

評価を具体的にする。生徒自身納得できるように(項目をつくることも含めて)。どこでも通用するものではないかもしれないが,生徒の実態,課題にあわせて観点をつくっていくことが大事なんではないかと。(長尾)


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