第56回公開授業

中学校 数学 「平行線と面積」
研究授業
意見交換会
平成20年2月1日(金)
京都女子中学校

授業者:平田 義隆 先生



研究授業  中学校 数学 「平行線と面積」

 

 前回は京都女子高校でしたが、今回は、同じ学校の中学校におじゃましました。見学させていただいたクラスは、中学3年→高校3年→京都女子大学4年の10年一貫クラスだそうです。(中学2年6組 Wisteriaコース 生徒数38名)    

 
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授業風景
きちんとした挨拶から始まります

集中力を付けるためにflash暗算をします
スクリーンに1桁の数字が10回表示され(1回1秒程度)
それら10個の数字の和を暗算します。
次は、2桁の数字が3回表示され加えます
みんな集中して、スクリーンを見つめます

今日学習するプリントが配られました
平行線と三角形の面積の説明です

プロジェクタと教材提示装置はかなり小さい
生徒はプリントに先生が説明したポイントを記入
先生は黒板の前にはいません。生徒のプリントを見て
進むペースを確認しています。ポイントは,先生の右手
(下の写真の赤丸)にあるワイヤレスマウス。

スクリーンではわかりやすい図が表示され

先生の説明と相まって図が変化していきます
また,チェックのために前のページにも戻ります

基本事項の説明が終われば

次は、その応用課題に挑戦です
平行四辺形に対角線を入れて,
同じ面積の三角形を探します
どの辺を底辺と考えるかで見えてきます
今度の課題は,この図形の中で△ACFと同じ
面積の三角形をできるだけ多く見つけること
生徒は,ある1辺を底辺と考え高さが同じ三角形
をさがします。次の1辺を同じように考え・・・

さあ,たくさん見つけたかな?
そろそろ解答するよ!

下の写真6枚は,先生が紹介した三角形
の一部です。このように,色を付けてどの
辺を底辺と考えたかを説明しますから線を
なぞるだけではないので,生徒にはとても
分かりやすいですね 。

生徒は,自分の見つけた三角形が先生の
説明した三角形にあったら○印を付けます
さらに応用問題が続きます。
四角形ABCDと同じ面積に
なる 三角形を作図しなさい。
さて,どうすればいいのでしょうか?
補助線を1本引くとヒントになりますね
生徒はここで見つけたようです
さすがにするどい感覚ですね
先生が補助線をさらに1本見せました
ということになりますね
では,どうしてこの方法でいいのでしょうか?
その解説をします
この環境なら黒板への板書も可能です
先生の説明をプリントに書き込みます
面積を変えずに図形を変形することを「等積変形」といいます
最後は,もっと高度な問題に挑戦
「五角形ABCDEと同じ面積の
三角形を描きなさい」
ヒントを見せます。
さあ,その証明をしなさい!
見学の先生方も生徒の理解度をチェック
平田先生は,個別に指導
先生方同士も確認します
生徒同士もまなびあいます
ここに1本線をいれてみたら・・・・
先生,できましたよ!
では,解説します
このように両サイドで同じ考え方をします
ということで,理解できました
1時間でしたが,中味の濃い授業でした
 
意見交換会
司会:長尾先生(大阪信愛女学院短期大学)

長尾先生:
初めて参加された方も織られますので,まず自己紹介をおねがいします。

参加者:
池田先生(上宮高校),岡本先生(兵庫大学経済情報学部教授),今井麻先生(四條畷学園中学校),今井隆先生(甲陽学院高校),笹谷先生(清教学園高校),齊尾先生(大阪国際大和田高校),西口先生(上宮高校),望月さん(NPO法人学習開発研究所),奥村先生(京都文教高校),樋野さん(日本文教出版), 赤澤さん(日本文教出版),大木先生(神戸国際大学附属高校),奥田先生(元研究会会長),堀さん(カシオ計算機),市川先生(大阪信愛女学院短大),成瀬先生(京都女子高校),飯田(四條畷学園高校)

平田先生:
中学、高校、大学の授業を持っています。中学は3コースありますが、私は国公立を目指すコースと10年一貫コースの2クラスで数学を教えています。今日見ていただいたのは,10年一貫コースの2年生です。このコースでは,週2時間「茶道」の授業があります。また,数学は週3時間なので、文系モードです。
両極端の2クラスを担当しています。今日のクラスは、普通に進んでいますが、もう1クラスは、もう、中2の教科書は終わっています。今日は,生徒は少し緊張していたのかもしれません。この4月からちょこちょこIT機器を使って数学を教えています。

成瀬先生:
高校の情報を担当していますが、数学も教えていました。黒板に貼っていましたスクリーンを紹介します。

長尾先生:
日常の授業でプロジェクターを使っている先生はおられますか?

大木先生:
普通教室には設置していないので、設置されている教室に移動して使っています。日本史の資料を教材提示装置で見せています。その上に書き込んでいます。

西口先生:
今まで,プロジェクターを使ったことはないのですが,使えばいろいろできるなあと感じて、すごく使いたくなりました。

今井麻先生:
初めて参加させていただきました。中学2年生の数学を教えています。今日の授業を見学できてとても参考になりました。今までパワーポイントを連立方程式のところで、使ったことはあります。すでにできているコンテンツの一部を修正して使いました。1.5時間から2時間かかる内容を1時間でまとめることができました。機材を教室に運ぶのが大変なので、ちょっとためらっていましたが、今日の機器を見ると、簡単に運べるなあと思えました。

平田先生:
今日のパワーポイントは、やはり時間かかってしまいました。もう1クラスは、全く違う内容なので、時間がかけられない現状です。パワーポイントにたくさん書かないように心がけています。生徒にたくさん書かせる場合は、黒板に板書するようにしています。生徒がなんで私らだけが書かなあかんの?というから。

齊尾先生:
私は,プロジェクタを使った授業を研究し、推し進めています。女性にとっては,重い機材を運ぶのは大変です。

平田先生:
あのスクリーンは,すごく軽くて紙のようです。値段は,12000円でした。ポストイットで,貼ってはがせるホワイトボードです。背景を緑色に設定すれば、反射が弱まり見やすいです。背景を白のままで使うと反射がきつくて見えにくい。あのスクリーンのいい点は,マーカーを使えることです。あの小さいプロジェクタは,カシオ計算機さんのものを借りて使っています。あのプロジェクタは明るくて,軽いので運びやすいです。今日の授業では19画面のスライドを使いました。

長尾先生:
今日の平田先生のパワーポイントを見て、どう思われましたか?

笹谷先生:
今回初めて作成したのですね。とても見やすいフォントや色を使っておられたと感じました。すごくセンスがいい色合いやデザインだったので、見やすかったです。

奥村先生:
昨年、教育実習をあのクラスでさせていただきました。高校と中学の数学と情報を教えています。今回の授業を見て、平田先生のまた違った授業を見せてもらいました。平田先生のすごさが今になって理解できました。普通,生徒は前に出ている画面をすべて書き写そうとしますが、今日の授業を見ていると写そうとしていないので,自分のやり方を見直したいと思いました。

齊尾先生:
私もそのようなことがよくありました。生徒は,「先生、それ写すのですか?」とよく質問されます。

平田先生:
以前は,「今のは書かなくてもいいよ。」と言っていましたが、今は、「書いてもいいし書かなくてもいいよ。どちらでも自分の好きなようにしたら?」と言っています。

齊尾先生:
今日の授業で,生徒は平田先生の話と自分の考えるのとのタイムラグがあるようですね。それは、先生の話を頭の中でリピートしているのかなと思います。これは、平田先生のテクニックだと感心しました。

平田先生:
隣同士で、確認しあうことがあってもいいと思っています。それはおしゃべりではなく、確認であるから。やはり、丸写しをしている生徒も何名かはいます。1度聞いたことは2度と聞くなと言ってます。ですから、こちらが説明した時に集中して聞くことを習慣づけています。

長尾先生:
短大でも、何度でも尋ねる学生がいます。また、パソコンの画面を見ながら、「先生!ちょっと」と呼びつける学生もいますね。

岡本先生:
教員養成を担当していますが,専門は教育史で、今は情報教育も教えています。京都女子大学でも教えたことがあります。前年の学生のレポートを見せてやると、コピーしてもいいかとすぐに聞きますね。自分の手元にいいレポートがないと不安になるのでしょう。ある先生が、黒板に紫のチョークで矢印を書いたら、学生が紫のペンがないかと教室内が混乱した,という話があります。

長尾先生:
先生がすべてを話さないと、すべてを書かないと納得しない生徒が最近多いですね。

大木先生:
私は,すべてを教えない方針です。世界史で講義をしない授業をしています。50分の授業中、私がしゃべるのは5分から10分程度。後は生徒が取り組み、まとめるということをさせています。つまり,ワークをさせる,作業をさせています。「現在の中国の経済はどうなっていると君は思うか、何文字でまとめなさい。」というような課題を出します。データを読ませて、それについえ考えることを述べさせるということなどです。教科書を読ませて、キーワードを拾わせて、文章にまとめさせる,という手順で行っています。今日の平田先生の授業中のトークは板書がとても効果的であると感じました。トークや板書の場面が1つ1つそう感じましたね。

西口先生:
数学Vを教えています。感情を表に出して授業を進めています。パワーポイントは効果的ですね。私は黒板から離れて授業をしているので、机間巡視をしながら、場面展開ができるのはいいと思いました。

平田先生:
ワイヤレスマウスは、そういうことができるのがいいですね。国語の教師のように授業を進めながら、生徒を見て回れるのはあこがれでしたから・・・

池田先生:
今日のパワーポイントで、平行線を回転できればよかったと思います。ヒントがいいタイミングで見やすくてよかったです。課題が自分でできる生徒がいましたが、それを教材提示装置がついているのだから、みんなに見せてやっても良かったのではないでしょうか。以前やったのですが,センター試験の問題の立体図形をプロジェクターを使って表示させて、黒板に表示された図形の上に補助線などを書いて説明すると、生徒はとても理解しやすいし、効果的だった。授業がとても進みやすい。この複雑な図を黒板に書くことは不可能ですから。今のプロジェクターは,USBを接続するだけで中のデータを表示させることができますね。パワーポイントをパワーポイントGIF形式で保存すれば、そのまま表示してくれますよ。

長尾先生:
生徒のノートやプリントを見ながら、授業をすすめることはとても濃い授業になりますね。

齊尾先生:
授業の途中で、分かったと言った生徒のプリントを教材提示装置で見せてやったら、という経験は私にもあります。生徒が手で書いた文字癖がたっぷり入ったノートを見せてやることが、その授業に集中させる効果を持つと思います。

望月さん:
プロジェクターを活用することは、共有するということですね。何を共有するのかというと、発見することを共有できればいいと思います。その点で言うと、この装置は授業にとても効果的だと思います。

長尾先生:
発見という点では、今日の授業ではどうでしたか?

平田先生:
答えを出す装置としては使いたくないですね。お互い教えあうヒントを提示する装置であってほしいと思っています。

長尾先生:
池田先生は、回転させたらいいといってましたが、紙を貼って、隠すとか、その部分を消すとか・・・・

平田先生:
ずっと、使っているとそうすればいいと思います。すべてを1から作成するのは大変時間がかかります。やはりパワーポイントのデータを先生方で共有するのがいいのかも知れませんね。コンテンツはサイトにいろいろあがっていますが、なかなか自分のものにできないのが問題ですが・・・

長尾先生:
今日の授業のコンテンツを持ち帰りたいを思っている先生は,沢山おられると思います。今後そういったことが進んでいけばいいですね。

堀さん:
作られたコンテンツを共有している市町村もあります。今日の授業はプロジェクターと板書を効果的に使っておられたと感じます。映像を見せて、板書して、画面をもとに戻して、・・・そのタイミングがよかったのでは・・・。力をつけるための機器として今後しっかり広めていきたいと思います。

樋野さん:
先生方がベテランになればなるほど、先生方の癖がでるので、教科書会社では基本のコンテンツを作成しますが、なかなか使ってもらえていない。加工が面倒なので、1から作成する方が簡単であるという声もあります。

今井隆先生:
私は,日本文教出版社さんのWebにあがっているコンテンツを、一部編集して使っています。

成瀬先生:
コンテンツを1から作成するのは楽しいです。学校でも、教科別にサーバーを置いていますが、コンテンツはなかなか集まりません。

大木先生:
本校でもそういう環境はありますが、なかなか共有はされていない状況です。コストパフォーマンスが悪すぎるという声が多くて、広がらないですね。最初は珍しさも手伝って、少し広まったのでうが、今は収束しています。ユーチューブは便利です。デジタルコンテンツは短い方がいいですね。

長尾先生:
コンテンツを使って、生徒に効果があるかと問われると、測る資料は生徒がどれだけ覚えたかということしかないですね、今は。しかし、今日見学させていただいたクラスは10年一貫コースだから、大学ではプロジェクターを使って見せる授業が良かったのではないかとなるのでしょうか?

平田先生:
10年一貫クラスだから、数学嫌いにさせたら大変だなと思っています。その責任は大きいですね。本校の先生方も数名見学に来てくれていましたが、プロジェクターを使った授業に興味はあるのだなあと思います。

奥田先生:
平田先生は、中学、高校、大学と3つの部門を教えておられますが、違いはどうですか。岐阜市の京町小学校では、「学び愛(友達同士で教えあう)」を大切にしていましたが、今の大学進学からいうと、ちょっと難しいとは思いますが。

平田先生:
プロジェクタを使おうが使わないであろうが、受験テクニックを教えるような授業が主流になっていますね。

奥村先生:
私がこの高校時代に、平田先生の授業は、いかに公式を覚えないか、いかにビジュアル的か、というのような授業をされていました。今現在教員になって、その単元を教えているのは私だけですから、もし、教えている生徒が教員になった時、私が教えた授業がその人の見本のすべてであるというのは恐ろしいと感じます。

平田先生:
普段の授業では、もっっと生徒からアクセスがあります。「先生、これだったらいけないのですか?」といって、素晴らしい発想をする。それを、活かせてやっています。

奥田先生:
最初のflash暗算の練習は、感覚で答えるのだから、ちゃんと次の授業に活かされているなあと感じましたね。

長尾先生:
最初の暗算練習の他に何かやっておられますか?

平田先生:
今の生徒は計算力が弱いので、一年の時100マス計算をやりましたがとても時間がかかりました。みんなで声を出していうというのがいいと思っています。

長尾先生:
先生の授業は、発言しやすい雰囲気を出していますね。

池田先生:
生徒が2人欠席していたようですが、その2人分のプリントを作成している生徒がいましたが、どうしてですか?

平田先生:
どうしてだか分かりません。こちらが指示しているのではないが、やっていますね。

長尾先生:
クラスの雰囲気はとてもよかったですね。伸びるクラスだと思います。

平田先生:
6年間クラス換えがないので、クラスでトラブルがあれば居づらいということを生徒らが感じているのだと思います。

長尾先生:
先日、枚方市立楠葉西中学校に授業見学に行きましたが、授業の中半からは「学び愛」といって、生徒がお互いに教えあう時間があります。その時、シンポジウムで、(1)授業の指導書を見せる。 (2)クラス全員90点以上をとる。などを示すと、生徒らは教えあって、一生懸命やり実践した、という報告がありました。今、あちこちの学校へ授業見学に行くと、授業で「チーチング」と「ラーニング」の時間を実践しているという報告が多いですね。

奥田先生:
そうですね、3分の2は授業で、残りの3分の1は「マイタイム」で、分からないところを教えあう時間という設定していますね。この前、 「教えることの復権」(大村はま 刈谷剛彦・夏子 ちくま新書)を読みましたが、とても大切だなと思うことが書かれていました。参考になると思いますよ。

市川先生:
パワーポイントで動きのあるものを作ろうとすると、あらかじめ生徒の反応を想像して作成していますが、生徒が違う反応をしたときは、そのパワーポイントと流れが変わってしまいます。それに対応するには、タブレットや写し出した映像に書き込むことが必要です。パワーポイントは、次の流れが読みづらいです、次の画面を忘れてしまいます。次のスライドの流れが見えるモードを使うと便利です。飛ばしたり、戻したりできます。それをするには、マルチウィンドゥにすればできます。USBのグラフィックボードを使うと可能になります。

長尾先生:
教材を共有すれば、いろいろな使い方ができますね。

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