第55回公開授業

「アルゴリズムの基礎」
研究授業
意見交換会
平成19年12月15日(土)
京都女子高等学校

授業者:吉岡 芙紗子 先生



研究授業  「アルゴリズムの基礎 〜Java Scriptでオリジナル『脳内メーカー』を作る〜」

 

 今回は、京都女子高等学校におじゃましました。素晴らしい天気で、京阪七条から三十三間堂や国立博物館の前を通って東山方面に登っていくのも気持ちが良かったです。土曜日の午前中のキャラバンとなりましたので、女子大学の食堂で昼食を挟んで、午後意見交換会をもちました。
   

 京都女子高等学校では、1年生で「情報A」を履修していますが、その中で、近い将来、大学入試科目として情報科が追加された場合の出題傾向を考え、 「問題解決」や「アルゴリズム」についての内容が重要と据え、Java Scriptを用いたプログラミング実習を通し、コンピュータを使ってある特定の目的を達成するための処理手順(「アルゴリズム」)についての学習を取り入れているそうです。
  
  そこで、今日の授業は、14時間でアルゴリズムの基礎を学ぶ単元の4,5時間目の授業で、Java ScriptのFor文の入力方法とオリジナルな成分分析機をアルゴリズム⇒フローチャート⇒プログラミング の手順で考え、プリントに書いて提出するという内容でした。
   

授業風景
東山の方に登っていくと、一際目立つピンク色の校舎が京都女子中高等学校です
吉岡先生から、今までの授業の振り返りと
今日の授業で行うことの説明がありました
今日は、大阪や京都の高校らが授業見学に来ていますよ
ノートPCを教室の後ろのロッカーへ取りにいきます
机上のコンセントとHUBに接続します
生徒らは、手慣れたものです
課題提出フォルダの指定は前に提示
配布プリントを参考にメモ帳で入力していきます
先生は教室内をこまめに巡回
とまどっている生徒には丁寧に説明

【見本】
   <html>
<title>成分分析</title>
<body>
<script>
var s=prompt("??の成分分析がしたい");
document.write("「",s,"」の成分分析<br>");
x=s.charCodeAt(0);
if(x>=10000) {document.write(s,"の65%は石で出来ています<br>");
} else {document.write(s,"の65%は水で出来ています<br>");
};
if ((x % 2) == 0) {document.write(s,の20%は空気で出来ています<br>");
} else {document.write(s,"の20%は藁で出来ています<br>");
};
y=s.charCodeAt(1);
if ((y % 3) == 0) {document.write(s,の15%は金で出来ています<br>");
} else if ((y % 3) == 1) {document.write(s,"の15%は醤油で出来ています<br>");
} else {document.write(s,"の15%は土で出来ています<br>");
};
</script>
</body>
</html>

入力したスクリプトが正しく動くかどうかを画面でチェック
う〜ん、これでいいよね
入力のチェックが済んだ人から、オリジナル成分分析機の
アルゴリズムを考えます
アルゴリズムが完成したら、
次は、それをフローチャートにして
プリントに書いて
提出すれば、今日の課題は終了です
 
意見交換会
司会:長尾先生(大阪信愛女学院短期大学)

今日は、授業の終了が12時30分ということで、先に大学の食堂で昼食をすませ、その後意見交換会ということになりました。

さすが、女子大の食堂はメニューも豊富でヘルシーな品揃え。参加された方々は、好みの品をトレイに入れてレジで精算。

みなさん楽しく、美味しくいただきました。

 

昼食後、先ほどの教室に戻って、いつものように意見交換会を行いました。

緒方校長先生
 2年前にも来ていただきましたね、その時は成瀬先生でしたが、今回は吉岡先生の授業を見てもらいました。このキャラバンがずっと継続して55回を数えるということで、熱心に研修されておられ感心いたします。
 情報は、社会で負の要素がクローズアップされています。携帯電話でのいじめの問題がどこの学校でも起こっています。京都府警の専門の方に来ていただいて、教職員の研修も実施いたしましたが、そういった他校や外部との情報交換も必要だと痛感しております。こういった場所で、是非情報交換をして欲しいと思います。また、今日の吉岡先生の授業に関してアドバイスをお願いいたします。
長尾先生
この研究会でもよく情報交換しています。学校で、情報の先生何とかしてよとよく言われますが、どうもしようがないのが現実です。学校で、持ち込み禁止にしている学校、許可している学校といろいろありますね。即解決というのはなかなか難しいですね。現実に応じた具体策がなかなか見つからないのが現状です。今後も、いろいろ話し合いを進めていきたいと思います。

緒方校長先生
携帯電話のトラブルは、学校だけの問題ではなく、学校と保護者とが協力して対策を考えないといけないですね。

長尾先生
国民としての課題だと思っています。

緒方校長先生
昨日、教育再生会議でも取り上げられていましたね。

長尾先生
携帯が悪い、コンピュータが悪いとよく言われますが、そうではなく、情報だけでモラルを教えようとするのではなく、全教科でいきるモラルを教えないといけないと思います。
このキャラバンは、京都女子で3回目で、来年2/1には中学でお願いしていますし、大阪から発したキャラバンが京都でも実施していただいてありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
では、吉岡先生、今日の授業のねらいやコメントをお願いします。

吉岡先生
ジャバスクリプトはとっつきやすいプログラム言語だと思います。メモ帳で、htmlのように入力することができます。それを使って、最終的には、アルゴリズムを自分自身で考えて、それを言葉にして理解させたいなあと思っています。

長尾先生
他校でプログラムやアルゴリズムを学ばせている学校はありますか。

小林先生(須磨学園)
アルゴリズムをやっています。情報Bを採用しているので、その中にあります。アルゴリズムとプログラミングを4時間ずつやっていますが、コースによっては、4時間で終わるコースもあります。

村上先生(京都府立宮津高校)
精華の教員をしていた時に、学校設定科目でやっていました。フローチャートとアルゴリズムです。「朝学校へ行くのに玄関を開けた時、晴れているときと雨が降っているとき」をフローチャートに書かせました。VBAを使ってやりました。エクセルのマクロですね。最終は、「ある企業で売り上げたら報奨金がもらえる。○○円もうけたら、報奨金がいくらになるか」というプログラムを作らせました。

今井先生(甲陽学院高校)
今、甲陽学院でやっています。エクセルのVBAでゲームをつくらせましたが、うまくいかなかった。見本をプリントして配ったら、そのタイピングをすれば、ちゃんと動く、これならタイピングの練習かではないか? そうではなく、次にこれを考えさせるにはどうすればよいかを考えないと・・・・

池田先生(上宮高校)
今まで、やってこなかったが、来年からは是非やってみようと思っています。教えるべきだと思っている。コンピュータの中身を教えるために、これが大切だと思います。生徒達の論理思考力が劣っているので、これを鍛えるために是非教えたいです。大学入試で論文を書くとき、論理という言葉がよくわかっていない生徒が多い。生徒から論理と理論はどうちがうのですか?と質問されたことがあります。プログラムをやると、そういうことが理解してもらえるのではないかと考えています。

   

笹谷先生(清教学園高校)
今まで教えていません。N88Basicから私は入りましたが、教えてはいません。

西田先生(大阪樟蔭高校)
授業時間が余ったのでプログラミングをさせたことはあります。日本語のプログラミングでした。論理的思考は必要だと思います。大正高校でロボットの授業を見たとき、ロゴマインを見てやってみたいと思いました。

古川先生(清教学園高校)
プログラミングをやっていれば、論理的思考能力が身につくと思う。もし、教えるならば、実際に動いている具体的な様子を見せないと難しいでしょう。

池田先生
昔の「数学A」の単元にあったプログラムを教えたことがあります。BASICで、センター試験の数学の問題で選択しても難しくなかったので試験直前に教えたことがある。
今の生徒に数学の問題を解かせたとき、どのようにしてこの問題を解いたかを尋ねると、「普通に解いた」と答える。この普通というのを、説明できない生徒が多い。

長尾先生
アルゴリズムを教えている人と教えていない先生がおられますが、アルゴリズムを教える価値があるのでしょうか?日常生活で、生徒らは、アルゴリズムを考えていると思いますか?

村上先生
プログラムを教えるのではなく、フローチャートやアルゴリズムの手順を教えたいのです。今日の吉岡先生の目標と同じです。登校の手順をアルゴリズムでやり、日常生活を考えて作成させると意義があると思います。

長尾先生
情報以外で、論理的思考は養えないのでしょうか?

齊尾先生(大阪国際大和田高校)
受験指導でやってました。総合学習の時間に、チーム学習で課題解決をさせていました。解決のための手順書(段取り書)を作成させ、誰が、何をするのかを書かせていました。すごく早いチームは、やはりいい段取り書を書いています。論理的思考がしっかりしていのだと思います。そのチームの段取り表を他のチームに見せ、どこがどう違うのかについて討論させました。

長尾先生
自分では解決できなくても、グループでやると問題解決できるのではないでしょうか?

吉岡先生
まずは、個々でできれば、グループ学習も可能であると考えています。

堀さん(カシオ計算機)
今日の授業を見せていただいて、こんな授業をしているのかとびっくりしました。今、会社に入って説明するためにフローチャートに書き換えて、理解するということはやっています。先生のつくるチーチングプランと同じようなことを作成はしています。

長尾先生
脳内メーカーというサイトを知ってましたか? ほとんどの人が知っていて、アクセスをしたことがあるのですね。生徒は全員、仕組みを知っているが、なぜ、そのページを導入に使ったのですか?

成瀬先生(京都女子高校)
日本文教出版のテキストを見て、あれ、これで、脳内メーカーみたいなことをつくれるやん。それで、生徒に1時間脳内メーカーをさせてみて、入力する言葉によって表示がかわるだけやんと理解させ、気づかせました。最終、作らせたいのは、入力した言葉で、どのような言葉を表示させるかを判断させたいということです。

長尾先生
脳内メーカーを遊びやと思っている生徒と、ホントに信じる生徒といると思いますが?

池田先生
自分の性格の中で一致しているところをあわせているだけです。血液型の性格判断も同じで、以前に「A型の特徴を読みます。」と読んでやると、そうやそうやと納得するが、今のはB型のやといってやると、その事に気づきます。

遠山さん(日本文教出版)
「情報B」の分野で、JavaScriptでのアルゴリズム編のテキストを作成しました。メモ帳で簡単にできるので、自宅での自分の学習としても使えるように作成しました。皆様方も、よかったら是非使ってみて下さい。

奥田先生
昨日、大阪国際大和田高等学校で産業協力授業としてロボットの授業を見学しましたが、ブラックボックスになっているので、生徒らは何がどうなっているのかが理解できていない。だから、そうなるものだと信じてしまっていますね。

吉岡先生
京都文教高校で、フードデザインという授業を受け持った時、隔週で調理実習をさせていました。その時、今までやったことのあるものばかりしか作らないので、生徒らに新しい手の込んだ料理に挑戦してみたらというと、そんなもの作ったことないからできなかったらいややからと、いう。これでは、新しいものが生まれてこないですね。

長尾先生
生徒って、失敗を嫌いますね。ある規定の範囲内でしか動けない。

齊尾先生
生徒は失敗することを恐れるので、失敗することが新しい成功を導くのですよ。と話しますが、・・・

平田先生(京都女子高校)
クラスの生徒たちと異なることを嫌う傾向にありますね。スイッチ1つで、みんな同じものができる。手順が必要ない。2/1にキャラバンで見てもらうクラスは、上に上がるクラスです。茶道を習っていますが、その作法の流れをメモしてはいけないそうです。しっかりまねはするらしいですが、その決まった流れを嫌う生徒がおおいです。お茶なら飲みたいときにガーッと飲んだらいいやん、という調子です。何も知らない相手に、手順を追って説明するのが、苦手というかいやがる生徒が多いですね。

長尾先生
携帯での仲間ができ、あらかじめある程度わかっている仲間同士では、単語のみでの会話が成り立つ。それ以外の人とは、説明するのが大変だから会話しないようになってきていますね。これも、携帯の功罪ではないでしょうか?

松本先生(大阪学院大学高校)
今、プラモデルが売れないらしいです。ほとんど完成したものしか売れないそうです。どうしてかというと、時間を掛けて達成感を味わえるようなことをやらないし、もちろんやったことがないから、達成感を味わったこともないという子供が多いですね。

長尾先生
達成感を味わせるために、一緒にそこまで導いてやらないといけないのでは、それが教育では?・・・

奥田先生
デパ地下で買って帰ると、簡単でうまい。家で同じようなものを作るには大変だし時間もかかる。これが現実です。合理的なことを好む傾向が多いから。

高橋先生(清教学園高校)
成果がでるのに一番苦労するのがプログラミングです。生徒にC言語をやらせています。生徒らはいろいろ言いますが、結構楽しいです。拒否反応をする生徒もいますが、興味を持って大学に進学してもやってくれている生徒もいます。

竹中先生(立命館高校)
KYK(空気読めない系)の生徒が多く、表面だけした見ていないですね。どうしてそんな顔をしているのかを理解できるようになるにはアルゴリズムを理解できないといけないと思います。人間のバグをとるのがプログラミングだよ、と授業でいっています。TV等で、みんなが知っているものを作って、見せてやる。あっすごいね、そこから、オリジナリティのものをつくらせていいと思います。まずは、模倣から始まると考えています。

市川先生(大阪信愛女学院短大)
話が広がりすぎて、話をまとめられにくいのですが・・・。すべてのものがインプットとアウトプットで、中身がブラックボックスとなっているのが、危ういと感じます。この世の中では、システムを開発し作る人と使う人がいます。結果がおなじであっても、人間とコンピュータがやっていることはちがいます。

樋野さん(日本文教出版)
論理的思考を教えるためにプログラミングが必要というのはちょっと違うと思います。昔の人は、プログラミングやらなかっても、論理的思考はあったと思いますし・・・。

川原さん(カシオ計算機)
「動かないコンピュータ」・・・ボタンを押すだけで、機械の中身がわかっていない企業の人もたくさんいます。

成瀬先生
日本文教出版のテキストをそのまま打って、学習するというのもいけるかも・・・。学びは模倣からはじまるのもいいかと感じています。

このように、多方面に渡る様々な意見が出され、約2時間ほどの意見交換会が行われました。

   
   
研修会

意見交換会の後、研修会として、今年2007年でどのような活動をしたか、自分を振り返って1人15分のプレゼンをしていただきました。時間の関係で、今回は6人だけとなってしまいました。準備をして来て下さった方、申し訳ありませんでした。またの機会にお願いします。

 

■村上先生
■齊尾先生
■堀さん
■笹谷先生
■今井先生
■奥田先生
   
その後、場所を移して忘年会を行いました。

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