第48回公開授業

「プレゼンテーションソフトを用いた個人発表」
研究授業  
意見交換会
平成18年11月24日(金)
相愛高等学校

授業者:笹谷 智一先生(情報科)



研究授業  「プレゼンテーションソフトを用いた個人発表」

 

 今回48回のキャラバンは、大阪の都心にある相愛高等学校におじゃましました。地下鉄「本町」から地上に上がると、ずら〜とビジネスビル街が並んでいます。そのビルの1つが、創立120周年を迎える相愛高等学校中学校の校舎でした。

 見学させていただいた授業は、情報Aの内容で、5週間(10時間)の学習内容で、最終の10時間目のプレゼンテーションの個人発表会でした。生徒個人が自分自身のこと(趣味やクラブなど)について、発表してくれました。スライドは表紙を入れて4枚と限定で、スライドの中には自分が撮るか、もしくは写った写真を必ず用い、発表時間は2分間という制限が与えられていました。

 前回の時間には、リハーサルを行い、それをビデオで振り返ってブラッシュアップして今回の発表を迎えたというだけあり、みなさんとてもしっかり分かりやすい発表でした。やはり、プレゼンテーションの授業は、1回発表させるだけではなく、自分の発表を自分で確認させ、もう1度やらせるということはとても大切な指導だと感じました。

 
授業風景
コンピュータ教室の壁には、下のような「調べもの学習」の手順や、「情報デザインの基礎」についての学習方法の説明が貼られていました。
← また、今までの授業での生徒作品も掲示されていました。
発表の前に、先生から発表方法についての説明をして、いよいよ発表会が始まりました。
生徒達は、お客さんも多く緊張すると思いますが堂々と発表していました。
 
タイトル「ENGLAND」
タイトル「イラスト部」
タイトル「イギリスのホストファミリーについて」
タイトル「趣味の映画について」
タイトル「プチサンプル」
タイトル「ハリー・ポッター」
タイトル「文化祭ライブだ」
タイトル「キャンディーとの毎日」
タイトル「BASKETBALL」
タイトル「盲導犬のボランティアについて」
タイトル「中学の時のクラブ」

タイトル「好きなもの」

タイトル「カメ吉とモモ」
タイトル「ENGLAND LIFE」
1人発表すると、その発表について相互評価をプリントに書きます。
タイトル「家の犬のビーグル」
タイトル「三味線」
タイトル「ホームステイ先での遊び」
タイトル「My pet について」
タイトル「本」
タイトル「空手の旅」
タイトル「Meal culture of uk」
ある生徒の発表原稿です。
全員の発表が終わり、授業を見学にきた先生方に、今回の発表についてのコメントをいただきました。
最後に、この発表会の自己評価を書いて、授業は終了いたしました。
 
意見交換会
これらの新聞記事ファイルは、笹谷先生が新聞に掲載されていた「情報」に関する記事の切り抜きで、スケッチブックに貼り、何冊もあります。

司会:長尾先生(大阪信愛女学院短大)

長尾先生:
先ほどの授業の最後に「先生方何かコメントがあれば、お願いします。」と言われたが、咄嗟のコメント力がなかったので、コメントができなかった。咄嗟のコメント力の大切さを感じた。
 
新聞ファイルや授業を見せていただいて、笹谷先生の授業に対する意気込みが違う!ということをすごく感じた。
 
では、まず最初に授業者に今回の授業について話していただきます。

笹谷先生:
今日の授業クラスは、英語コミュニケーションコース。
「情報科」は専任3名(理科1、数学2)と非常勤講師1名,助手1名で、実習は笹谷と助手のTTです。本日の授業に関連する指導の方針、方法は、配布しました別途資料をご覧ください。

山崎先生(「情報科」助手):
相愛では3年目、その前は清水谷で情報科の立ち上げ。その前はSOHOでWebデザイン等(プロのデザイナー)。

笹谷先生:
山崎先生は、プロのデザイナーで、情報演習室の管理だけでなく、授業の計画やプリントを作成する際にも必ず相談する。
  
顔写真を撮って一枚目のスライドに入れる。撮る、撮られる、画像の取り込みという技術習得と、アイスブレーキング的な意味もある。
プレ発表のときは暗い感じだったので心配したが、きょうは楽しそうにやっていてよかった。

笹谷先生:
このプレゼンの説明前に、プレゼンの失敗例を見せた。
1)カラフルで文字飾りやアニメーションが多いのはダメ。
2)何でもかんでも入れない。写真は1画面1枚で、内容を絞る。
3)文字ばかりのスライドはダメ。
4)聞き手にあわない難しい或いは長い説明はよくない。

長尾先生:
失敗例の提示は、いいのではないか。時間の節約・短縮になるし。

今井先生(明浄学院):
うちでは、その「悪い例」のようなポスター作りをさせていたりする。自由にやらせて気付かせるのと、初めに教えるのとの比較は、微妙なところだ

笹谷先生:
生徒もやっているうちに、過度のアニメーションはいらないと感じてくるようだ。

長尾先生:
アニメーションをふんだんに使っているプレゼンをよく見かけるが、生徒への指導は、アニメーションが必要かどうかを先に教えますか、それとも、後で教えますか?

田中先生(上宮):
最初はアニメーションを使わせて、必要かどうかを考えさせるように指導している。

吉岡先生(京都文教学園):
家庭と情報を教えている。何年か会社員をして教員になった。他の先生の授業を見せていただくのは初めて。1学期の最後にプレゼンテーションの授業を行った。悪い例のプレゼン等の失敗例を初めに見せて、4時間で発表までもっていった。背景と文字の色のバランスなども指導し、タイトルと内容のスライド3枚の計4枚で発表させた。発表時間の制限は設けず、原稿作りはさせなかった。

長尾先生:
制作・発表は、グループか個人か?

吉岡先生:
グループを嫌がる生徒が多かったので、グループを希望する者だけグループにしてあとは個人発表としたが、40人クラスだし、かなりの強行だった。

西田先生(近大附属):
評価を基準に考えて、個人発表としている。

村嶋先生(浪速):
評価の点からは、個人のほうが公平。グループだと不公平が出易い。

米田先生(羽衣学園):
個人とグループの両方をやっている。グループでの評価の公平性のために、誰がどのような活動をしているかをチェックするようにしている。

長尾先生:
個人とグループのそれぞれのよさがある。プレゼン甲子園は、グループのよさが表れていますね。

竹内先生(府立成城):
個人のワークシートとグループのワークシートを作成して書かせ、自分がグループの中でどんなポジションなのかを認識させないと、グループ学習は難しいのではないか。個人発表で相互評価の際には、「いいところだけ!」にしている。

笹谷先生:
1学期の模造紙による発表(写真右)は、グループ活動でした。4人グループで、左上・右上・左下・右下の4つのスペースを1人ずつが担当し、個人で作成した資料を1枚の作品として貼りあわせ作品としている。

長尾先生:
個人で発表させて、相互評価している先生はいますか?

竹内先生:
相互評価は、いいところだけを書かせ、私は悪いところだけを見る。生徒がきちっと評価しているかどうかを評価している。

笹谷先生:
相互評価をしているが、その相互評価は、私の評価には含めていない。相互評価表に、「自分より良かったところ」という生徒の他者評価コメント欄を設けている。そして、それに書かれた文章をまとめて、生徒に配布している。

笹谷先生:
(今までの授業で、生徒に配布したプリント全部を配布 写真上右・左)
1年で、これだけのプリントを配っているのだなあと、改めて思った。週に一回、助手、非常勤講師と時間(教科会議)を決めて集まって、打ち合わせを行い、そのときに、配布プリントの内容を相談し、改良している。

長尾先生:
教科会議を週1回とっている学校はありますか? ・・・ ない

竹内先生:
府立は、原則として各教科必ず教科会議はある。

松本先生(大阪学院大学高校):
プレゼンで発表させると、やじる生徒もいて難しいクラスもある。

池田先生(上宮):
パソコンをあまり使わないプレゼンをさせている。教壇にたって喋るという経験をさせると、パワーポイントを使っているときよりも、前を向いて喋る。しかし、年々、生徒の自然な反応は希薄になってきているという印象がある。

笹谷先生
助手さんに、発表の様子を撮ったビデオや写真を撮ってもらい、それらを見せるときは、自己評価(反省)を書かせながら見せる。生徒には、プレ発表のビデオを見せて反省させる。今日の発表でビデオを撮影したが、それは、私の評価の時に使う。

プレゼン甲子園で、大阪国際大和田の生徒にブラッシュアップでコメントすると、それがすぐに次の発表で活かされたので、これは使えると思った。

大谷先生(川西市立明峰中学校):
中学校の技術家庭科では、小規模校ではPCを扱う授業はなかなかできていない。設備としては、(兵庫県川西市)の場合には、一人一台のPC教室とHRに各二台が整備されているが、活用されているとはいえない。プレゼンテーションは、総合的な学習の時間で取り組んでいる。行事の後、模造紙に書いて発表はさせているが、この授業見学は今後の参考になった。

米田先生
小学校の高学年で使う情報の本が出た。パワーポイントの説明も含んでいる。ポスター制作も含んでいる。
1学期の模造紙による発表の際、図書室調査とインターネット調査のところはどんなふうにされたのか?図書室との連携は非常に重要だと思うが、その実際上の工夫は何かあるのか?

笹谷先生
図書室の司書が「図書室をぜひ使ってください!」と云ってくれることもあって、積極的に利用するようにしている。調べもの学習の指導方法についても相談にのっていただける。例えば、「地球温暖化」で検索した言葉を調べ、それに関する語彙を増やすことから始めた。

米田先生:
テーマ設定はどのようにして?

笹谷先生:
最後のスライドを一番最初に考えさせ、逆に戻っていく。4枚と決めているので、表紙を除いて3枚だから、起承結という感じで制作させている。

◆ポスター制作について

笹谷先生:
ポスター制作の授業の一番最初に、この2枚のプリントを見せます。(授業風景の2枚目の写真)この2枚のプリントの素材や文字はまったく同じであるが、見ただけで違いが分かる。この違いを言葉で説明できますか?

ピンクの文字の横の緑色の写真がとても映えているのは、ピンクの補色が緑であるからです。

 

◆肖像権、個人情報、著作権について

笹谷先生:
ホームページに写真を載せる際には、個々に許諾を得ることにしている。表彰等で顔がアップで載る場合はすべて、一つひとつ許諾を取っている。これまでに、一度だけ「載せてほしくない」というのがあった。殆どの場合は、「なぜ自分は載せてくれないのか?」という逆方向の不満である。

長尾先生:
或る幼稚園では、園の案内に在園中の園児の写真を使ったら、載ってない子の親から、「なぜうちの子は載らないのか?」というクレームが来た。そこで、卒園した子の写真を使うようにしているという。

小林先生(清教学園):
弁護士の話では、「オプトアウト」といって、掲載して、「やめてくれ」という要請があったらすぐに下げるという対応でもホームページの場合はOKだということだった。

竹内先生:
新聞報道等では、肖像権は許諾なくメディアに載せてよいという常識があるが、考えればおかしな話だと思う。

大谷先生:
母子家庭の子どもで、元の父親から逃げて転校してきていた学校で、顔の写った写真が学校のホームページに出たことで父親に所在を知られてしまった。このことで母親が学校を訴えたというような事例があった。

まだまだ、笹谷先生の情報教育にかける情熱と学校での情報担当としての仕事のご苦労話が続きました。

日本から技術面での国際協力としてドミニカ共和国の職業技術訓練庁に派遣されておられる村上先生(健康診断のため一時帰国中)も参加していただきました。

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