第41回公開授業

高校2年情報コース 「情報デザインU」
プレゼンテーションデザインの基本
研究授業
意見交換会
平成18年6月2日(金)
大阪学院大学高等学校
5,6限 (13時25分〜15時15分)
授業者 福田幸三先生 (美術)



研究授業

 5,6限 プレゼンテーションデザインの基本

 プレゼンテーションデザインは研究発表、企画・広告のスライドショー、ネットワーク上での会議等で重要なデザインの分野となっています。PhotoShop と PowerPoint の連携で訴求力の高いグラフィカルなデジタル・プレゼンテーションが行えるようマスターする授業でした。

素材となるものは、5月2日(火)に実施された「ユニバーサルスタジオ・ジャパン」への校外遠足でのデジタル写真を画像加工ソフト(PhotoShop)でトリミング、イラスト表現などの編集加工を行い、テキストと組み合わせプレゼンテーション(PowerPoint)として視覚伝達力を備えたものとなるようにデザイン構成する方法を学びます。

 

授業風景
校門を入ると、この鮮やかな緑が校舎とのコントラストをいっそう引き立てます。また、生徒の栄光をたたえる2つの垂れ幕が来客を迎えてくれます。



福田先生から、本時の授業説明 PhotoShopに文字を入力して、Adobe ImageReadyでアニメーション化
生徒達は実習に入ります
生徒の実習をモニタリングする福田先生と松本先生
分からない生徒には、個別指導
教育実習生も巡回指導
助手の先生も指導に廻ります
松本先生も
Photo Shopに付いている Image Ready でアニメーション制作 USJの文字があちこちらら集まって1つのUSJの文字になります
プロジェクターで、写真のスライドショー化したデータをPowerPointに取り込む方法を説明
生徒は実習にかかります
 
意見交換会

司会: 長尾先生(大阪信愛女学院短大)

記録: 小林先生(清教学園中高等学校)

まず、会場校の園副校長先生からご挨拶をいただきました。
2年前に、福田先生・松本先生を中心にして「情報コース」を設置し、デザインを中心にしたカリキュラム内容を行っているとの説明。 ↓

福田先生:
このキャラバンへの参加は始めてで、軽い気持ちで受けたが、授業計画を、タイムスケジュールを、と要求され…(笑)。
今日は、Adobe Photoshop にバンドルされている ImageReadyを使った授業。フレーム単位での編集のほうが高校生の場合は視認性が良いので、これを使っています。

長尾先生:
高1の時に情報系では、時間数で5時間、科目数で3科目を生徒さんたちは履修されているようですね。

福田先生:
「情報デザイン」の授業では、グラフィック・デザインにウェイトを置いています。「情報A」は、高1は松本先生が担当、高2では、別の先生が担当しています。

森本先生:(堺女子)
生徒は、驚くほどよく操作しているようだが、フォトショップの操作修得にはどれくらいの時間をかけているのですか?

福田先生:
高1時に、ほぼ1年間をかけて修得してきています。個人差もかなり出ています。

長尾先生:
1年生の最初からでも いきなりPhotoshop の操作について来れますか? オフィス系のソフトをわかった人が入ってくるのでしょうか?

福田先生:
生徒の意欲はとても強いです。情報コースは、入学時に選択しているので、そういうことをやりたい生徒たちが必然的に集まっています。グラフィックデザイン系の内容を中心に、高1次にコンピュータ関連の授業を計7時間行っています。

長尾先生:
入学時のガイドラインとして、このコースに入るのに、Office ぐらいは使えることを条件にしたりしているのですか?

福田先生:
Photoshop 等を使うという予告だけで、特に操作の能力を求めることはありません。

松本先生:(大阪学院大学高校)
「情報A」のほうで Office をよく使いますね。

飯田先生:(四條畷学園)
学校案内のカリキュラム表を見ると、「情報デザイン」を学校設定教科として、「情報」とは独立させていますが、その意図は?

福田先生:
そもそも、「情報」というよりは「デザイン」という趣旨で始まっている。このコースを設置する際に方々に視察に行ったのですが、関東では、「デザイン」をアピールして成功している学校が多く、そういったことも参考にしながら、設置しています。「情報」というと、どうしても「サイエンス的」な響きがあって、高校生には敬遠されがちな傾向があるようです。そこで「デザイン」を前面に出したコース設計を考えました。私の専門教科は美術で、情報の免許は取得していません。

飯田先生:
情報デザインI・II・III とあるが、今後3年次に向けてどんな展開を計画されているのですか?

福田先生:
Illustratorを2年次でメインに据えていきたいと思います。出版、印刷業界では、Illustratorが事実上標準の道具だからです。3年次では、3D と CAD を使わせてみようと考えています。そして例えば 3Dでは、サイエンス面に興味を持った生徒はその後プログラミング等を、というふうに、個々の興味に応じた展開ができればよいと思います。

長尾先生:
福田先生自身は、もともと美術教員ですから絵を描いておられたのですよね。このコース設置をきっかけに CG などを学ばれたのですか?

福田先生:
自分は、元々は西洋画が専門なのですが、何でも新しいもの好きで、PC は MS-DOS 時代から利用していました。マックをよく使っていました。

奥田先生:(大阪国際大和田)
「情報デザイン」ではなく最後は、「情報」というコース名にしたのは、何か理由があるのですか?

福田先生:
詳細は、わかりませんが、最後は、理事会がそう決定しました。関東圏で「情報デザイン」という名称での成功事例が多かったということが、影響したと思われます。ただ、PC 利用に対する意識は、関東と関西でかなり温度差があると感じている。例えば、PCインストラクターの賃金ひとつを見ても関東が関西の2〜3倍あったりするなどの違いがありますね。

長尾先生:
福田先生の場合は、基本的に「美術」から出発しているということなのですね。この研究会は「教育の情報化」を意識している人、そして「情報科」の先生も多いですが、視点が違っていてかみ合わない場合もあれば、反対に異なる立場からの意見が、お互いに有効であることもあると思います。いつものように皆さんには、忌憚のないご意見をお願いします。

西田先生:(近畿大学附属)
本日のような内容の授業において、美術教育の視点からは、どういうことをポイントにしているのでしょう?

福田先生:
画面、映像に対する人の視点の習性、例えば大雑把に云って、人は、画像は左から、文字は右から見るといった習性を踏まえた上での作り方を伝えたりしている。自分の授業にはやはり美術的な文脈は多く含まれていると思います。

西田先生:
そういったことを実践するためには、やはり美術の専門領域での資料などを参考にする必要があるわけですね。

川口先生(堺女子):
生徒さんが一人ひとりPCに向かってとても楽しそうに作業をしている姿に感心した。残念ながら自分の学校ではまだそこまでできてないのが実情です。。

森本先生(堺女子):
確かに生徒が授業中に、作業に集中している様子がうらやましく感じられた。この学校(コース)の生徒さんは、美術系に興味をもった子たちが集まっているのですか?

福田先生:
そうではあるが、「興味がある」→「描ける」とはいかない。例えば3次元的な認識なども、実際にはかなり困難である。CGの利用がその辺の解消に一役買う可能性はあるのではないかと思います。

森本先生:
私たちも昔は色々な絵を描いたりしたものです。最近、子どもを見ているとどうしても似通ったアニメーションのキャラクターしか描けなくなっているのではないかと感じています。例えば、幼稚園児にCGをさせたりすると、今度は、クレヨンで描けなくなるのではないかと心配してしまうのですが…。

福田先生:
その辺は、正直なところ、予測困難ですね。ただ、幼児にPCによるCGを扱わせることには、自分自身は少々抵抗を感じています。

楠浦先生:(明浄学院)
生徒の興味を引き付けて、作業に対する集中力が途切れないようにしておられるのが素晴らしいと感じました。とても勉強になりました。有難うございます。

高瀬先生:(帝塚山学院大学教授)
イメージ・リーディ(Image Ready)というソフトは知りませんでした。今日は、色々と勉強になりました。

平井さん:(有限会社カイヤ)
プレゼンテーションという観点で云えば、テーマは一つでも、例えば生徒が25名いれば25通りの表現がある。また、各々の得意とする面がある。つまり一人ひとりが異なった感性を持っているということである。それを互いに見合い、評価し合う中で、「ああ、こんな表現があるんだ!」というような気付きや学びが生じる授業を期待したいと思います。

福山先生:(元大阪信愛女学院)
自分は、情報の担当ではないが、この教室に入ってみて教室の机のレイアウトにまず感心しました。最近ではどこでもあんな机なのでしょうか?また遠足という学校行事で得たデータを加工の材料としているところが、校外学習から継続した指導になっていてよいと感じました。とても勉強になりました。

白川先生:(大阪学院大学教授)
高校生にやる気を起こさせる工夫を十分にされているという点で参考になりました。

小林先生:
美術ではどちらかというと最終的な作品で勝負するという面がありますね。画家は、自分の絵の前に立って語ることはないようです。その点、情報教員の立場からすると、作品を作成していく過程で生徒にいろいろ語らせて、相互に情報を「共有」させたくなるのです。素材、技法等に含まれる意図を、生徒間で語り合って理解しあうことと、最終的な出力だけでどのような評価を受けるかを比較するような試みもできるのではないかということを、本日の授業を拝見して考えた。つまり説明をつけないでも見る人に自分の想いが伝わったり、反対に説明したにもかかわらず自分の思いと別のものを見る人が感じていた、というようなことがわかるかもしれませんね。

福田先生:
「プロの芸術家と高校生は違う」ということは大前提である。(私の)美術の授業でも、デッサン、レイアウトなど、作品完成までのプロセスにおいて各段階で生徒の意図などを問い、評価する形をとっています。修学旅行でも、研究したいこと、体験したいこと等の目的をまず決めて、それに応じて行き先を決めるということも行っています。ですから今回は、色々と相談した結果として、目的地が屋久島になったわけです。

松本先生:
授業中に作った生徒の作品と、私のサンプル作品(見本)をお見せしましょう。

奥田先生:
松本先生(情報)が、情報の基礎を担当され、美術の福田先生が、さらにデザイン面の指導をされて、という有効な連携が行われているのが素晴らしいと感じました。教科「情報」は全ての教科の情報化のための縁の下の力持ちの役割という考え方もあると思うが、一方、それとは逆に、「本人が好きなら」基本スキルの修得は放っておいても勝手にするという考え方もあるかと思いますがどうでしょうか。

松本先生:
私個人の見解としては、デザインを目的とした内容に関しては、勝手にやってくれるのではないかと感じています。

長尾先生:
最近、自分が教えている授業の中で「チーム学習」といったものを試みています。そこでは、グループの各メンバーがそれぞれ得意分野を活かして活動に貢献するような形になります。「どの生徒も自分一人で、全項目において一定の水準まで」という従来の画一的な目標設定とは全く異なる学習観も今後、出てくるのかもしれませんんね。

 

平井さん:
自分はプロデューサーで、チームをまとめる役割である。しかし私が相手にしている彼らはプロである。いっぽう高校生はプロではないが、得手不得手をはじめとする多様性は現実に存在する。そしてそれがあることに彼らが気付き、また概念として獲得することが重要ではないかと思います。

奥田先生:
私もグループで学ぶことには、関心を持っています。わが国では、学習者が相互に学びあったりするスタイルの学習が最も遅れていると思っています。外国は、このような学びを取り入れているようです。従って今後は、そのような新しい学習が求められてくるのではないかと予想しています。

隅さん:(日本文教出版)
日本文教出版は、古くから美術科の教科書を手がけてきました。社会の流れや要請に先駆けて情報科へと対象を広げてきました。福田先生とは、古くからのお付き合いで、福田先生こそ、美術と情報教育とを繋ぐ貴重な実践者であると感じています。今後も益々ご活躍をして頂きたいと感じています。

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