第36回公開授業

短大 学力向上講座
CGデザイン特別演習


研究授業  
意見交換会  
テキスト1 テキスト2
平成17年8月23日(火)
産業技術短大

授業者 大江 完(岡山学芸館高校 美術科)



研究授業

 5,6限 学力向上講座CGデザイン特別演習

 

 第33回キャラバンと同様に、今回も産業技術短大の特別演習に於いて、外部の学校から講師を招き授業を公開するという形式でした。産業技術短大には、「情報処理工学科」「機械工学科」「電気電子工学科」「システムデザイン工学科」の4つの学科があります。産業技術短大の小池助教授が昨年度からシステムデザイン工学科の学生に専門的なコンピュータデザインを学ばせたいと考え、知人でCG−ARTS協会認定CG講師である岡山学芸高校美術科教員の大江先生に依頼して実現した夏休み特別演習だそうです。(今年度で2回目)

 この特別演習は、8月22日から26日の5日間(午前10時から午後4時まで)で完結する内容です。

 その授業で配布されるテキスト(11ページ分)には、あまりの美しさに驚かされました。  → テキスト1(PDF 3.4MB) テキスト2(PDF 2.6MB)

 こちらは、ファイルサイズが大きいですが、とても美しいファイルです。    テキスト1ページ(PDF9.4MB)    CG通信(PDF 14MB)
5,6限 授業風景
教室に入っていくと、ご覧のように「iMac」の17インチモニタで、学生が Adbe Illustrator を使って一生懸命イラストを作成していました。広い教室に、机上は iMac だけでスッキリとした感じでした。
授業が始まり、大江先生から「アニメーションの基礎」(テキスト10,11ページ)の授業であると説明。学生らも、私ら見学者に配布された美しいテキストでした。
まず、Illustrator で新しいキャンバスに楕円を基本とした図形を描かせます。できるだけ簡単にするため、コピー&ペーストを上手に使うよう指導。
レイヤーの概念を説明し、レイヤーオプションから「レイヤーの複製」をクリックし、その図形を上と下に移動させます。そして、ファイルをMacromedia Flash ( *.SWF)形式で書き出し、ブラウザ(IE)でアニメーションの動きを目で確認します。
その後、上と下の図形を変形して、同じようにデータを書き出し、また、アニメーションの動きを見ます。
今度は、上下の図形を5つのレイヤーにし、5つを等間隔に並べ、それを書き出しアニメーションの動きを確認します。
でも、実際に飛び上がった場合は、重力により「慣性の法則」が働くため、5つのレイヤーが等間隔でいいのかどうかを考えさせ、2番目と4番目のレイヤーを1番目と5番目に近づけたアニメーションの動きとを比較するよう指示し、学生に実習させます。
その実習の間を利用して、岡山放送のTVで放映された岡山学芸館高校の生徒(大江先生が指導されている)がイラストレーターとして活躍しているビデオを見せていただきました。この教室の周囲にも、その生徒たちの作品が展示されていました。
登場する生徒(6,7名)もあのようにTVで取り上げられ方をすると、本人の自信に繋がり、また、新しい制作意欲が沸くと思います。

その後、学生の作品が「慣性の法則」を考慮された作品となったかを机間巡視で確認し、まとめとして「アニメーションを作成するには、画像を均等に並べるだけでは実際の動きとはほど遠い。「慣性の法則」を考え、最上点や最下点での止まりを表現しなければいけない、と締めくくられました。
   
公開授業の教室の奥には、なんと珍しいNECのPC8001などの昔懐かしい機器が展示されていました。これらは、小池先生が集められたそうです。
 
意見交換会

まず、司会の長尾先生(大阪信愛女学院短大)からキャラバンの流れを説明し、授業を担当された大江先生から今回の授業についてのいきさつを説明していただきました。

大江先生:
岡山学芸館高校で美術科を担当していますが、選択科目なので年々授業時数が減少してきています。学校では私1人でCGをやっています。6,7年前にCGをやろうと思ったが教科書がなかったので、CG−ARTS協会で勉強して、産業技術短大の小池先生と知り合いました。この講座は、小池先生に依頼され昨年度からやっています。(高大連携) 

小池先生:
この授業は、主にシステムデザイン工学科の学生が受講しています。本来の授業におけるデザインの授業が、現在のカリキュラムでは少ないので、課外授業として希望する学生に開講しています。現在,デザイン関連の授業を増やす方向で,来年度カリキュラムの検討に入っています。デザインを志す学生はアンケートによると3分の1程度はいるので、その要望に応え、学生へのサービスと必要性の両方から実施しています。

長尾先生:
学生のパソコンのリテラシーはどの程度ですか?

小池先生:
受講生のほとんどを占める,システムデザイン工学科1年次生は,前期授業の間に,Office、2DCAD、3DCAD、イラストレーターの入門編の授業を受けています。

長尾先生:
パソコンリテラシーの個人差があるように思われますが・・・

   

小池先生:
年々入学してくる学生間のコンピュータの操作技術や情報に関する知識の格差が広がっていて、システムデザイン工学科や情報処理工学科の授業でも困っています。高校で「情報」が必修となって、情報処理技術を学ぶ機会が増えると、これからはもっと差が広がるのではないかと危惧しています。現在の所,CAD系の操作技術のスタートは横一線ですが、Office系の操作技術は差が開いたままで入学し、さらに広がっています。

長尾先生:
大江先生は、これだけパソコンが使えるのならば、情報科の教員とのTTなども行っているのですか?

大江先生:
情報は教えられません。PCをあまり使ってられなくて、座学を多くやっているようです。私は、情報科に関わることはできません。

長尾先生:
美術科であれだけの設備を持っているのは素晴らしいですね。

大江先生:
情報科用のPC教室は2教室ありますが、放課後は解放していません。美術科のパソコン教室はいつでも開放し、生徒がいっぱいです。この6年間は絵画などはやらずに、CGだけの授業に専念しています。選択科目で、1年で20名、2年で40名、3年で40名が美術を選択しています。(1学年約300人) 1年の導入はイラストレーター、2年の導入はアニメーション、3年の導入には3Dをやっています。もちろん、選択した生徒のリテラシー格差はあります。美術を選択した生徒の4分の1近くが不登校の経験があったり、心の問題を抱えたりしている生徒ですが、いいセンスを持っている生徒です。CGをやりたいという目標をもって入学してくる生徒もいます。

長尾先生:
精華高校の村上先生も、情報の授業でアニメーションや3Dをやっておられますが、どうですか?

村上先生:
立場が違うと目的も違いますね。近づきたいとは思いますが、それが目的にはならないと思います。私は授業でCGの仕組みを知ることを目的でやっています。これが情報かなと思っているので、1つのソフトをトコトンやるのではなく、広く浅くやっています。完成品は美しさではなく、説明した部分が作品に表れているかで評価しています。

長尾先生:
大江先生、教員の役割って何だと考えておられますか?

大江先生:
私は、「店番」だと考えています。あそこに行けば、必ず大江がいて相談に乗ってくれると生徒に思ってもらえることだと思います。

   




 

成瀬先生(京都女子):
私も生徒に1,2時間イラストレーターを使わせている。ペイントはほとんどの生徒が知っているので、教えてません。先生のテキストにある「タコ」の絵はいいですね。

大江先生:
ペンツールから始めるのではなく、ペンツールで終わります。ペンツールが使えればほとんど完成します。

笹谷先生(相愛):
手書きのイラストをスキャナで読み込んで、ペンツールでパスを拾うという手法は、いいのでしょうか?

大江先生:
それができれば、もう、ほぼ終わりですよ。

このように、90分におよぶ意見交換会は、盛りあがり、大江先生の教育観も垣間見れました。大江先生の印象に残ったアドバイスを2つ。
1)1)生徒の作品を、ただ印刷して渡しただけではゴミになるだけです。額装して展示したり、ちいさなものでも、シールやラミネートにしてやると大事に持ち帰るようになります。
2)単純な課題にいかに時間や手間をかけるかで、その作品の奥行きが出てきます。

 

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