第21回公開授業
情報A
情報A「コンピュータを用いたシミュレーションの練習」
研究授業  
意見交換会  

平成15年10月24日(金) 第6限
高校1年1組(43名)
帝塚山学院泉ヶ丘高等学校 http://www.tezuka-i-h.jp/
授業者 糸川 潔 先生(担当:情報)



研究授業 情報A「コンピュータを用いたシミュレーションの練習」

授業の背景
 帝塚山学院泉ヶ丘では1年に「情報A」を学びます。限られた時間に出来る限りコンピュータに接し、そのスキルを上達させることによりコンピュータの持つ有効性や必要性などを認識させるという糸川先生の方針で進めておられるそうです。

1学期の授業内容
(1) 1学期はコンピュータの有用性を座学(パワーポイントを用いたプレゼンテーション)で学ぶ
(2) 美佳タイプによるタイピングの練習
(3) パワーポイントを用いた自己紹介の作成及び自己紹介の練習
(4) ワードを用いたビジネス文書、ビジュアルチラシ、表などを作成する練習
(5) 定期テストは行わず、作品のみで評点をつけられたそうです。

2学期の授業内容
(1) 2学期はエクセルを用いた計算の練習が中心
(2) 具体的にはセルの処理、和、平均、順位、IF関数、Vlookup関数、ソート、フィルタ、グラフなど。

今日10月24日(金)の授業内容
(1) モンテカルロ法による円周率の計算
(2) インターネットから引っ張ってきたボールが落ちる正規分布の実験
(3) 有名な「つり銭問題」 実際に実験をさせて、コンピュータを用いたシミュレーションの有効性を認識させる。また財布の中に500円ある者の割合を調べて実験させてみる。(乱数関数の有用性も教える)
(4) 年代別人口構成割合と出生率を与えることにより、エクセルによる人口推移のシミュレーションを行う。


まずは、糸川先生から、モデル化とシミュレーション
の定義について、PPで説明がありました。
コンピュータがシミュレーションに有効な
理由についての導入説明です。

乱数についての説明をされました。

エクセルで rand( )などの関数の説明です。



数学で習った順列・組み合わせの復習


乱数を発生させて、関数のグラフ作成
アプリケーションで、座標をとります。

モンテカルロ法で円周率を求める方法を説明します。

エクセルで、πの値をモンテカルロ法により計算します。
コンピュータはこのように単純な数多くの計算を
する時に非常に有効であることを知らせます。

つり銭問題についての説明と、この問題がなぜ
シミュレーションに適しているかを説明します。


エクセルでのシュミレーション実行画面。

コンピュータによるシミュレーション
の便利さを理解させます。
・ 実際の場面を想定して,乱数を発生させ,その幹事が持って置けばよいであろう500円硬貨の最小値を考えさせます。
・ 4人に3人の割合でつり銭がいる時も,Rand()やVloolup( , , )を変えたり使ったりして,コンピュータでシミュレーションさせます。
・ 20人中13人がつり銭が必要な時もシミュレーションさせてみます。
・ 実際に生徒に財布の中をのぞかせ、つり銭が必要な人間の数を求めて応用させます。

糸川先生は、シミュレーションの過程で,出てきたモデルの妥当性や結論を分析させ、その際、「仮説⇒実験⇒結論」の科学的方法論を説明し、その発想を習得させることをねらいとしているそうです。

 

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意見交換会

司会:長尾 尚 先生(信愛女学院)
パネラー:糸川 潔 先生(帝塚山学院泉ヶ丘高等学校)
記録:吉田 泰明(向陽台高等学校)

(敬称略)

まずは、会場校の木下校長先生のご挨拶。
木下先生は、元本研究会の会長を永らくしておられました。

糸川=>
 今年、数学から情報へ。とてもしんどいが、頑張りたいと思う。
不十分なところが多いとは思うが、皆さんの率直な意見をいただきたい。内容は、つり銭シュミレーション、モンテカルロ法、数学主体なので、自分が興味あることをやってしまう。生徒にとっては、難しかったとは思うが、数学の力があるクラスなので、割と理解してくれているようには思う。シュミレーション、未来の予測というのが大切だと思うので、どっかで入れたかった。


長尾(司会)
皆さんの感想を聞かせて下さい。

飯田(四條畷)
1年の数学の内容を考えると、この時期で順列・組み合わせは早いのではないか。
←糸川
中学からの生徒なので、普通より進度が速いのです。計算もやっているので、分かっている。

池田(上宮)
エクセルを使いこなしているのはすごい。 シュミレーションは大切だと思う。コンピュータを実感できるのではないか。
←糸川
週1時間授業で、エクセルは8時間目。テーマを決めて、「今日はソートの練習」「今日はIF関数」などと行っている。

長尾
コマンドとかは問題ないのか?
←糸川
ディスプレイで示せるので、その場でひとつずつ示しているので、いけている。

長尾
先生のやったことをやらせる形ですね。一斉学習がいいか、個別指導がいいか? 自分の学校と比較してどうですか。
←成瀬(京都女子)
私も数学科なので、エクセルにこだわりたいけど、女子なので・・・。円周率はやった。集中力がなくなる。今日は、男子もいたが、女子も反応している生徒もいた。
←糸川
内容が内容なので、投げかけはできないのではないか?今日の内容なら、経験をさせることでいいのではないか?ある程度のスキルをつけないと進展もない。テーマを見つけてみなさい!と投げかけることも可能かもしれない。時間がないし、2学期以降はインターネットをしないと。

長尾
今日の中で生徒に何を伝えたいですか?
←糸川
未来を予測しよう!それにはコンピュータは役立つ。シュミレーションはいいテーマだと思う。未来を知るために、いろんな実験をしてみよう!円周率の 3.14は本当なのか?を実験で確かめてみよう! ひとつの方法として、乱数の発生、モンテカルロ法は有効ではないかと思う。

長尾
未来を予測する場合に!具体例はいくつか出したのですか?
←糸川
人口推移などをやってみたい。世代別の人口比、出生率、世代別5年間生存率など。

長谷川(京都橘)
コンピュータが使えるというのがわかった。内容がわかれば、コンピュータは使えると実感できるのではないか。自分はもっと簡単なテーマだが・・・。どのように確認しているのか?テストはどのように?
←糸川
理解度は、生徒に廊下で聞く程度。なかなか使う場面がないので、その後はどうかわからない。2,3回やれば、わかることもあるのでは。難しいとは思っているが、前回、ある程度やったので、繰り返せば、わかると思う。確認方法はない。また廊下で聞いてみたい。 テストは、1学期はワープロとプレゼンの作品から評価。ワープロは、ビジネス文書、ビジュアル文書、チラシなど。プレゼンは自己紹介。ただ、「このことについてはどう思うのか」を入れる。実技のテストをしないといけないかと。モデル化、シュミレーションのテストは予定していない。


まだまだ、熱心に質問が続きました。

情報Aで、情報Bの内容を学んでいます。



今回のキャラバンに関しての
VBBはこちらから

飯田
情報Bに該当する内容だが・・・。
←糸川
本音は、これがしたかった。教科書はAを使ってないけど、買わせている。コンピュータを使えるメリットのひとつとして、科学的な考え方の中で使うコンピュータ。カリキュラムでは、Aだが、内容は自分で設定してやっている。

枡田(関西創価)
生徒が先生の指示に答えて、手際よくやっていた。実習するときに、ワークシートなどで操作したことを記録させると、実習をやりっぱなしだけでなく、きちんとやっていたかがわかるのではないか。宝くじで期待値を求めるなどを、エクセルを使ってやらせるなど。140円の期待値のものを300円で買っている現状を理解できるのでは。

成瀬
1/2を2/5に変えたのを、うちの生徒はメモして帰る。あの部屋はペンなど使用禁止なのか?
←糸川
メモはペンで。なんらかのプリントにすればよかったか。

長尾
出版社さん、シュミレーションなどのワークシートなどはあるのですか?
←隅(日文)
うちの本なら使える教科書かと思う。会社として情報の教科書に力を入れている。依頼していただくと、いけるかと。
←手塚(富士通オフィス機器) 
情報Aの副読本を販売しています。教育現場には、はじめてです。大変なのには、生徒数が多い。企業向けでは、10名でインストラクターひとりが普通。題材に苦労されているのでは。身近な題材を与える必要があるのではないかと。OA化の企業向け教育をやってきた。厳しい時代なので、目的意識が明確になっている、緊張した教育が必要になってきている。効率よく、短時間で教えるような教育がある。我々は非常に喜んでいる。学校教育の中で、少しでも役に立てるように。

長尾
研究会としては、教科書の使い方などの勉強会をしたいと考えている。
←糸川
実用的な内容で、英語や国語とか受験教科ではないので、経験することは役に立つかもしれない。他のアプリをしたいということを無視してでもエクセルをやりたいと思っている。社会に役立つ経験をさせてやりたい。こっちが言わないと経験できないことをやらせる。今日のはしんどいとは思っていても、やらせるんだと。

長尾
エクセルでワープロもやっている人もいますね。生徒が知っている公式をどう扱えるか?今日もそのうちのひとつだが・・・。
←松本(大阪学院)
シュミレーションは、理科としては、なぜコンピュータを使うのか? 使わないとしんどいでしょ? 経験を積み重ねて、コンピュータが必要だと感じさせたい。エクセルは、表をつくってグラフにできるのが特性だと思う。まずは表だ。
←西田(泉大津)
生徒の立場からすると難しいかも。生徒の学力差などを考えるのはイヤだが、先生方で実習をする機会をふやしてやりたい。←奥田先生(大阪国際大和田)
コンピュータは科学的な計算機だった。ここ15〜20年で、ハードはブラックボックスであって使われる方に。理科系の常識を教えることも大切かと。もっともっと先をいく教育を考えていくことを中学校・高校に下げていかないと。一方で、大衆的な利用(コミュニケーションツール)としても大切。表がグラフにと応用的なことにもつなげていかないと。物理的な現象もソフトをうまく使っていかないと。大学入試がペーパー試験になっているので、みなさんに期待している。理系の授業をやっていただくよう期待している。

長尾
情報A,B,Cはバランスの問題。情報の活用力をみていくべきだ。
←森本(堺女子)
免許講習会でスキルを教えるわけではない!と言われた。中学で、ワープロ、表計算、プレゼン、メールをできているとして、教科書をつくっている。やっぱりスキルもある程度しないと先へ進めない。学校にもよるが、どっちがいいのか答えは出せない。


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