第3回公開授業
  
情報処理「落下運動の
シミュレーション」

研究授業
意見交換会
平成13年11月9日(金) 第4限
飛翔館高等学校 http://www.kansai.ne.jp/hishokan/
3年実務フィールド選択生徒
授業者  川崎 初治 Email



研究授業  情報処理「落下運動のシミュレーション」

 

 Excelを使ったシミュレーションの授業。一般教科とITをつなぐ「クロスオーバー授業」の一環として、今回は、理科の物理の授業内容を、総合コースの選択科目で振り返るという設定です。

 2学期からはじめた、選択科目情報処理Uでは、表計算ソフトを用いた統計・グラフ作成をします。これまで4時間をかけてExcelの基本操作を習得。なんと、先生が一斉指導したのは4時間中1時間だけ。残りはテキストを見ながら自学自習体制で。進度の違いを見越して、個別のサポートをするには、こういった方法も必要になってくることを改めて感じました。

 生徒は学年で共用のノートPCを使います。準備室にロッカーがあり、そこで充電。授業中はまったくのコードレスで足をひっかけることもなく、とても使いやすい環境です。


 「$E$4*COS($E$5/360*2*PI())*B10」なにやら難しい数式を入力しています。記号の入力につまずく生徒もいますが、隣どうし、教えあいながら進めています。ふだんの授業では歩き回って、先生のサポート役?になってくれる生徒もいるそうです。

 目標どおりのグラフが表示されると、みんなほっとした様子。数字を変えると、瞬時にグラフが変化。初速、角度を変化させて、「もっとも高く上がる角度は?」「もっとも遠くに飛ばすには?」と検証しました。最期に、Wordで授業の感想を入力してまとめとしました。

生徒教材はこちら

 

授業者のコメント

 遠方よりの参加をいただき有り難うございました。理科(物理)のクロスオーバー授業としても中途半端で、教科情報としても内容的にははずれていたような?はたまた、実務的なコンピュータのスキルアップからも・・・とにかく中途半端な授業を見せてしまったような気がしています。コンピュータをどう教えるか、コンピュータでどう教えるか、コンピュータの何を教えるか、が今後の課題だと考えています。

生徒の感想

 今日「Excel2000」をやって、いつもとはちょっと違った感じのプログラムで少しとまどったが、そのうちわかるようになったので、以外に面白かった。少し緊張した。(T.M)

  私は今まで、グラフを作るのはむずかしいと思っていましたがとても簡単に作ることができ、自分で線を引いて描くよりきれいで早いのでこれから使う機会があればもっとグラフを活用していきたいと思います。(Y.K)

  グラフを簡単に描くことができることがわかったので、やり方を忘れないように、頭に残るようにしっかり授業を受けようと思います。パソコンがあれば、嫌いな数学などが楽しく勉強できるようになると思います。(M.K)

参加者の感想


 物理との関連を持たせた授業は、「他教科・科目との関連を」という声に応えていただいたものとして、参考になりました。教科『情報』において、コンピュータ操作の習得がどの程度重視されるのかも含め、今後勉強して行きたいと考えています。(栗谷先生、 摂陵中高等学校)

 Excelを使ったシミュレーションは,同じ理科の教師として,興味深く参観させていただきました。化学担当ですが,さっそく中和滴定曲線のシミュレーションに使えないか考えています。勤務校では,情報関係の授業は、まだ実施していないので, 見ること,聞くこと全てが参考になります。教室の前方にキーボードを描いた大きなボードがいいな・・とさっそくメモしました。普段,学校では「情報」の話をする機会がありません。丸1日「情報」の話題に浸り、安心・充実感を感じ,頑張ろう!!という元気が出ました。懇親会にも,参加させて頂いてよかったです。(南先生・賢明学院)

 数学教員として、馴染み易い授業でした。生徒は、数式には馴染みにくいのが常ですが、予め停滞しそうな箇所に細かな配慮がされているのを感じました。Excelのグラフが、標準設定では目盛りサイズを自動調整してしまう ということが、所謂「ありがためいわく」になるケースを体験させるところが印象的でした。物理の授業のツールという捉え方のみならず、ソフトウェアのユーザとしての経験を重視した 立場が感じられました。(小林先生・清教学園)

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意見交換会

司会:長尾 尚 先生(信愛女学院)

パネラー: 川崎 初治先生(飛翔館高校)
  
記録:関西大学大学院 稲垣忠

 意見交換会では、はじめに飛翔館高校の寺田英夫校長先生より、飛翔館のIT戦略についてお話をうかがいました。つづいて、サポート・コンサルタントを担当されている川本さんから、来年度からの具体的な計画について、説明がありました。「受験に耐えうるIT教育」、教科「情報」や、これまでの情報教育とは異なるアプローチとして、とても興味深いものでした。

飛翔館のIT戦略
 
 環境整備

  • 入学時に生徒1人1台にB5型ノートPCを貸し出し
  • OA室で集合授業+普通教室には無線LANを設置
  • 家庭での利用も前提に、家庭用・学校用の設定の切替ができるようにしておく。

 受験に耐えうるIT教育

  • 英数国の教科でITを使った授業を設定
  • 受験対策のためにITを活かした個別学習を活用
  • 教材コンテンツは既成のものに、学校独自、教師独自のノウハウの積み上げを図る
  • 資格取得についても、数値目標を明確にしたトレーニングを実施
  • 職員室の情報化により先生の労力を省き、教材開発の時間を確保

 クロスオーバー授業

  • PCに強い先生と受験に強い先生の連携を目指す
  • 1年目は準備期間
    • 教材の共同開発を通し、教師のITスキル育成
    • 生徒はタイピングの基礎を徹底

今回の授業について

川崎先生からコメント:
 ふだんから「PCは面白い」を前提に授業をすすめている。生徒がPCに触れる状況をできるだけつくる。あまり時間は確保できていないが、ある程度は使えるようになってきている。タッチタイプもできるくらいの生徒でも、エクセルは難しいところがまだある。 タイピングができるだけでアプリケーションを扱えるわけではない。

Q:人数・生徒について(小林先生:清教学園)
:選択は20名 2年生は25名。 1年生は40人 週2時間ワープロに特化して
クラスによって進度が異なり、選択ということもあり、ゴール(最終的な学習目標)は設定してない状態で進めている。
「自由に書いてみなさい」と言われて止まってしまう生徒もいる。タイピング以前の、作文、書く力の不足が見えてくるケースもある。(川崎先生)

Q: 情報の時間以外に、教科の時間の中でできないか?(長尾先生:信愛女学院)
進学コースの生徒には情報の授業がない。たとえば、(PCを使う授業の無い)理数系の生徒では、タイピングできない、マウスでドラッグできない、セルの概念が分からない・・・となり、時間的にムリがある(川崎先生)

Q:私の学校は進学校のためか、保護者からは、PCでシミュレーションをやる時間があるなら、入試問題を一問でも・・・といった声も聞こえてくる可能性がある。(三保木先生:四天王寺学園)
たとえば灘高校では・・・学習意欲、啓発の意味でITを使っていく戦略自分のいきたい大学のWebを探す。そのためにどうしたらいいかを調べて発表など、総合とからめて、何のために勉強するのか?意欲を引き出すITの使い方をしたい。(小林先生:清教学園)

必要なスキル、必要な環境

Q:総合学習の時間で活用するには、Webブラウザが操作できる、メール交換ができるといった程度のスキルが最低限、必要だ(佐竹先生)
中1の最初のうちに操作スキルを定着させ、他の授業でも使えるような方向を考えている。
家庭での使用率も高いため、(川崎先生)。
受験という価値観がいつまで続くのか。情報活用能力をためすような試験も出てくるだろうし。 そういう意味では、レベルの高い高校では、情報教育は進んでいくのではないか(市川先生:信愛女学院)
休み時間の活用も必要だ。小学校では操作スキルの習得に、大きく授業時間を割いてない事例もある。小学2年生でホームページビルダーを使えるほどの実践もある。(稲垣:関西大学)
教科「情報」を大学入試センター試験で扱うか。扱わない⇒どこの学校も実践しなくなる危険性。 扱う⇒活用の実践力を軽視し、暗記教科になる危険性。 教科「情報」の特に実習で目指す、課題解決型の授業が、単なる操作の講習になりはしないか?(長尾先生:信愛女学院)
11月22日は、昼休み(12:40〜)から来て欲しい。開放してあるコンピュータ室で、生徒が自由に使っている。Webを見る生徒、自分のつくってるWebを確認してる生徒、タブレットで絵を描いている生徒など。Photoshopの使い方を生徒から先生が教えてもらったり、生徒どうしの教えあいも活発になってきている(小池先生:プール学院)


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