第2回公開授業
  
情報A「フリーソフトを利用した
マルチメディア学習」
研究授業
意見交換会
平成13年10月26日(金) 第5・6限
大阪薫英女学院高等学校 http://www.kun-ei-h.ed.jp/
カナダ留学コース3年8組
授業者  津田 郁夫 Email kyom@kun-ei.ac.jp



研究授業  情報A「フリーソフトを利用したマルチメディア学習」

 フリーソフトを使ったアニメーション作品の作成(5限目)と、 その作品発表(6限目)の様子を見学しました。3年8組40名を20名ずつ2講座に分けて同じ内容の授業を展開しています。今日の授業は、「情報処理」の年間計画表の中の15時間目、「マルチメディアの基礎」にあたります(指導案参照)。情報Aを意識した授業になります。

  アニメーション作成に使用したソフトは、Radium Software Developmentsの「Easy Toon」。簡単な操作で、GIFなどのアニメーションを作ることができます。利用する際には、ダウンロード、圧縮ファイルの展開、シェアウェア、フリーウェアの意味なども指導されたそうです。著作権の配慮を考える、ひじょうに実用的・実践的な場面ですね。

 本時は、これまで作成してきた作品を完成させることが目標です。生徒によっては、細やかな表現を出すために200枚に及ぶスクリーンを 作るなど、熱心に仕上げに取り組んでいました。

 発表会では、生徒による司会進行のもと、発表者は、自分の作品を紹介しながら、どのようなコンセプトで作ったのかを、前に出て紹介していきます。他校の先生方が大勢見ている中で堂々と物怖じしないその態度は立派だと思います。

 1つ1つ丁寧につくられた、なめらかなアニメーションの動きもさることながら、そのストーリー性のアイデアには、授業見学者もビックリでした。生徒らは、お互いの作品に10点満点で点数をつけ、批評しあい、サーバに作品を保存して、授業は終わりました。

生徒作品 「あんぱんまんの日常」 「女の子だもん!」 「毛虫」

授業者のコメント

 「公開授業」ということで、できるだけ日頃と変わらない様子を見てもらおう としすぎたかもしれません。来られた先生方に、生徒の作業中の時間を使って、ソフトの使い方や、コツを説明すれば良かったと反省しています。
 討論会で、やはり一番得した(勉強になった)のは、自分自身でした。 「公開授業キャラバン」の企画は、ぜひ多くの先生が、主役になってほしいと 感じました。

参加者の感想

  • 授業について 「生徒が楽しそう」
    • 生徒が活き活きしていた。タイピングが速く操作に不慣れな生徒が少ないと感じた。
    • 個人の差異にどう対処するか?生徒は、アニメ、音楽を作ることに非常に楽しんでいた。
    • 工業科でのプログラミング言語の時間などに比べると、生徒が自由で楽しそう。
    • 生徒は、おとなしいけれど、きっちりと発表もできていて、感心させられました。
    • 積極的な生徒たちで、少人数の恵まれた授業環境だと感じました。
    • 生徒の前向きな姿勢に驚かされた。生徒に発表の司会をゆだねるのは、とてもいい。

  • 作品について 「作成過程で学んでいることが豊富なのでは」
    • ユニークな授業。よくできている作品も多かったが、まとまりのないもの、未完成のものも。もう少し教員側からテーマを絞って与えたほうが、やりやすかったのでは?
    • アニメーション、音楽ともに作成過程がたいへんなものだけに、作品を鑑賞して受ける印象よりもはるかに生徒の学んでいることは豊富ではないか。

  • とても参考になった 「私も授業に取り入れたい」
    • 本校でもやってみたい。フリーソフトの活用、生徒の発表のやり方など参考になることばかりでした。ユニークな作品も多く、「コンピュータの授業は面白い」と生徒は感じているのでは。
    • 生徒が自由な発想での授業でした。私も授業に取り入れたい。
  • キャラバンについて
    • 今日のような授業の前段階のものを見学できる機会があれば、より参考になります。
    • やはり現場の教師と生徒の表情が見れるのがおもしろいです。12月でキャラバンを終わらずに、来年も年に何回かは、できる範囲で公開授業をやってほしい。
    • 授業や教材だけでなく、コンピュータ教室のレイアウトや、メーカー、機種、施設を見るだけでもとても参考になりました。

Top

意見交換会

司会:長尾 尚 先生(信愛女学院)

パネラー:重森 治 校長先生(薫英女学院)
    津田 郁夫 先生(薫英女学院)

記録:日本文教出版 池田正浩

 意見交換会では、大阪府私学教育工学研究会会長の重森先生のご挨拶のあと、研究授業について活発なやりとりがされました。参加人数は40名。府立高校からも、情報教育研究会の代表幹事山下先生(大阪府立阿武野高校)と、北千里高校の吉村先生が参加されました。

今回の実践について

(津田先生からのコメント)
・ワープロ2級検定も合格基準の子もいる。カナダ(1年間留学)でも授業で使っている。 でも,漢字変換や,フォルダ概念は教える必要がある。
生徒主導の授業を目指している。司会進行も生徒にさせるが、もちろん事前準備・打ち合わせもおこなう。 生徒には「できるだけ先生には質問するな」と言っている。お互いに相談させたりヘルプを 見るよう指示。レベル差の激しいクラスでは、そうしないと質問の嵐に。

Q:自分でやったことのない授業で感銘を受けた。フリーソフトの確認はいつ?(小林先生:清教学園高)
夏休み中に、100種類ほどのフリーソフトをダウンロードし動作確認。学校の古いPCは使用に制約があり苦慮。生徒の気持ちを「やりたいな」という気持ちでとめたまま(動機付け)その後,自宅で選んでこさせる。使えそうなフリーソフトは後日Webページに紹介します。

Q:今日の2コマだけで100ページ以上ものアニメーションを作ることができているのか?(高橋先生:東海大仰星高)
今日の子たちだけ,特別に別枠で1時間作業時間をとった。でも,コピー&ペーストでやってけば,3時間程度で今日の レベルの作品はできあがる。

Q:情報Aは遊び?こんな授業は遊びじゃないかと言われたときに,どう説得しますか?
長くやりすぎはダメ。しかし,教えないとクリアできないところもある。楽しみながら学べるところは大切。

Q:生徒は物怖じせずによく発表できていた。 アニメーションのストーリー性や音楽のセンスなど,今後教師に問われるのかな?( 坂東先生:聖母被昇天)
私は絵なんて書けません。でもコンピュータグラフィックとか扱う場面も出てくる。絵のセンスでは負けるけれど・・ 何でもできる人間なんていません。そういう部分がないとダメ。(飯田先生:四條畷学園)


情報と他教科との連携について

Q:音楽(他教科)の先生との連携などはどうでしょうか?( 高橋先生:東海大仰星高)
やっぱりやりたい。情報として今後必要だと思っているのは、共同作業,コミュニケーション活動、討論会などなど。そのためには他教科の先生方にもある程度コンピュータが使えるようになって欲しい。

前回のアンケートからも,他教科の先生とティームを組みたいという先生が圧倒的に多い。 日本文教出版が 配布してくれた冊子、「体重計,のってわかる生活習慣」を読むと,他教科の先生とどう協力していけばよいかが, なんとなくイメージできるのでは。(長尾先生:司会)

評価について

Q:評価の実際について教えて欲しい。( 小池先生:プール学院)
ワープロ検定の問題を利用したり、タイピングソフトのスコアを利用したり、生徒同士の相互評価も活用している。

今の学校では3年生で6単位履修できる。内3単位でタイピング練習・ワープロ検定を受けさせている。(山下先生:府立情報教育研究会)

作品の評価は難しい。結局は教師の主観なのかな。一生懸命やっているのを見ているだけに, そんなに低い点はつけられない。差もつけられない。10段階で6〜8以上つけちゃう。今度の情報は座学も入るので、ペーパーテストもできるかも?(飯田先生:四條畷学園)

生徒も今日見ていると,「いいものはいい」という評価をしている。素直である。(長尾先生:司会)

Q:構成が非常にうまい子がいた。シナリオ作りの段階ではどんなヒントを与えているのか?(吉村先生:府立北千里高校)
何もしていない。あの作品,活動に対して教師がどのようなサジェスチョンをすればよいのか,それは今後の課題。生徒間で作品の差もそれほどでない。作業時間の違いによる差はもちろん出る。

Q:情報デザイン」という本を読んだ。情報免許講習にも項目がある。 情報の受発信には、デザインという行動が介在する。デザインの基本的な部分を理解する 必要があるのではないか。(小林先生:清教学園)
作品だけを見ちゃうと,それは遊びに見える。 生徒の作品づくりのプロセスを追えば,どうデザインしているかが見えてくる。 評価もしやすくなるかも。(長尾先生:司会)

学校の情報化について

Q:コンピュータ関係のことはなんでも降りかかってくる。どうすればいいか? (吉田先生:向陽台)
頼まれても極力,すぐに行かないようにしている。家庭でPCを使っている先生も4割を超え,徐々に状況は変わっている。教員にPCの講習を数回しておく。 質問があったときに「それは講習でやりましたよ!」と答えると,質問が減る。プライドに訴えかける

PCを持つだけじゃダメ。 研修などにも積極的に参加して欲しい。 環境を整えることで先生同士の教えあいも起こる。 教師が成長することが必要である。(重森校長先生)

大阪府情報教育研究会は、教科「情報」のための研究会で、ネットワーク管理者を育てるところではないと言われ出発した。しかしその後、情報科の教員が(ネットワークの)面倒見るのは当たり前と言われた。府の言い分として体育館を体育科の教師が管理するように、PC室,ネットワークは、 情報科の教師が管理するのは当たり前だと。 情報教育研究会に「研修部門」を設ける方向で検討している。(山下先生:府立情報教育研究会)

学習に使うコンピュータ。教務に使うコンピュータ。質が違う。役割も分担しなければ。 教務をやっている先生が管理している場合はまだ摩擦は少ないが・・・。 家庭科の先生が情報の免許を取って,突然コンピュータの管理をまかされると,どうなるか? 第1回のアンケート結果にも、先生方の忙しさが出ていた。アンケートは 分析ができたらWebで公開しますが、「情報Aを1年生でやる」というのがいちばん多かった。(長尾先生:司会)


Top Back