平成17年度 総会のレポート
記録: 関西大学総合情報学部 上銘さん

あ い さ つ

大阪府私学教育情報化研究会  
会長 奥田 三郎  
(大阪国際大和田中・高等学校校長)

 本研究会は,今年20年目を迎えることが出来ました。これも諸先輩方をはじめ私立中学校高等学校連合会,本研究会の役員や大阪私学の先生方のご協力のお陰だと感謝いたします。今後も新しい企画を検討して益々,教職員に役立つ実践的な活動を充実させていく所存ですので,皆様方のご支援をお願い致します。

 平成17年度の総会では,「携帯電話と学校・家庭」をテーマに致しました。学校現場で火急の問題となっております携帯電話にまつわる社会問題を未然に防ぐべく教育的指導法の模索と同時に,その教育利用の可能性も含めて変化の時代に対応できる新しい視点を切り拓く必要があります。中高生の携帯利用の実態に詳しいお二人の講師をお招きしております。終了後には,是非フロアーからのご意見もお聞かせ下さい。

 3年目を迎えた新教科「情報」に加え「総合的な学習の時間」や「表現能力開発(プレゼンテーション)」などを対象分野として,これからも「情報」関連の授業公開キャラバン(4年目),「ICTプロジェクト・プレゼン甲子園(3年目)」,「産業連携協力情報授業(2年目)」,「大阪私学の情報アンケート(3年目)」、「各種の教員研修」などを精力的に進めて参ります。また「教育の情報化・学校の情報化」に向けた新しい取り組みの一つとして「情報化推進モデル校制度」を導入致します。本年度は,四條畷学園中高校と清教学園中高校を認定します。情報化先進校が,他校の教育情報化推進の一躍を担って頂くことで大阪私学全体の情報活用が進み,生徒達の「表現力」「考える力」「生きる力」が大きく向上することを願ってやみません。活動を支援するために8つの専門プロジェクトを設置しております。先生方の問題解決の糸口として本研究会主催の教員研修会に是非ご参加下さい。
本研究会は,情報教員だけでなく多様な教科の先生方や管理職といった幅広いネットワークを創造することで「情報活用の智恵袋」として参加者が一緒に教育情報の共有化を日常的に行えることを希望しています。

 役員の先生方は,頻繁にネットワークや対面でのミーティングを通じて新しい活動の企画・立案・実践を行っております。皆様方も「おおさか私学ネット」のホームページをご覧頂き気軽に活動にご参加下さい。

平成17年5月21日


テーマ

学校現場が直面する緊急課題 「携帯電話」と学校・家庭
月 日 平成17年5月21日(土)
時 間 13:00 〜 17:00
会 場 大阪府私学教育文化会館(私学会館)  5階 講堂 
参加者 126名    参加者名簿(pdfファイル)

  ■参加者内訳
    大学  5名
    中学・高等学校(教員・保護者)  73名
    大学生・大学院生  7名
    業者  41名
 

(pdfファイル 2.5MB)

講演された先生方のパワーポイントデータ
も含まれています。
プログラム 第3回情報関連のミニセミナー(協賛企業によるプレゼン) 13:00〜14:00

■1■ 株式会社パイオニア (学校教育用50V型プラズマ電子情報ボードの紹介)約180万円

<特長>
  ・電子黒板(大型のパソコンのモニター)
 ・先生がプレゼンテーション
 ・ポイントを書き込み強調できる
 ・授業の振り返りができる(保存ができる)
 ・明るい場所でも使用可能
 ・PDP方式なのでハンドライティングできる


■2■ イルガラージュ株式会社 (ライブキッズの紹介)

<特長>
 ・連絡網の活用性
 ・携帯電話普及
 ・キッズメール(メール、名簿登録、カメラサーバーなど)
<使い方>
  ・生徒の情報入力→送信メール編集→メール送信
 ・メールソフトの違い(自動登録機能、自動返信機能、自動応答機能、メルアド自動解除機能、遠隔操作機能、コミュニケーションツール、エコロジー)


■3■ 日本ベリサイン株式会社 (Vision 電子認証の紹介)

<特長>
 ・SSLサーバ証明書発行(ないすましなどのインターネットに潜む脅威からの対策)
 ・企業向け電子認証局構築サービス
 ・個人用電子証明書発行サービス
 ・PKI公開鍵暗号基盤について(秘密鍵、公開鍵)
 ・電子署名と暗号化
 ・電子証明書について
 ・証明書の取得方法

■ミニセミナーの会場の様子
プログラム 総会議事 14:00〜14:20


会長挨拶  会長 奥田三郎

本研究会、今年で20年目を迎える。情報化のスタートをきって2年目になります。各教科の先生たちが教材をいかに作っていくか、情報活用を広くとらえて今後活用していきたいと思います。いろんな調査結果の現状の対処もふまえて話し合いをし、これからの教育に貢献できればと思っています。
■ 総会の議長(大阪薫英女学院の津田先生)
事務局の上宮高校池田先生から平成16年度活動報告
会計の精華高校村上先生から平成16年度会計報告
会計監査の明浄学院高校今井先生から会計監査報告

平成17年度事業案と予算案も提出され、承認されました。ありがとうございました。

プログラム
研究会からの報告 2件
 

■ 教育情報化モデル校制度の設置について

「教育の情報化・学校の情報化」に向けた新しい取り組みの一つとして「情報化推進モデル校制度」を設置。
情報化先進校が,他校の教育情報化推進の一躍を担って頂くことで大阪私学全体の情報活用が進み,生徒達の「表現力」「考える力」「生きる力」が大きく向上することが趣旨。

本年度は, 四條畷学園中高校 と 清教学園中高校 を認定しました。

 

■ ICTプロジェクト 第1回セッション 5月28日(土)14:00〜 上宮高校(全4回を予定)
   産学協力授業について
   学習研究社「NEW教育とコンピュータ」の7月号〜12月号までに役員の先生方の実践が掲載されます。  

  ■ 休 憩
プログラム 講 演  14:30〜15:30
   「携帯インターネットのメディア特性と問題点,その対策」  

      群馬大学 社会情報学部教授 下田博次先生  http://www.netizenv.org/top.htm

                 著書『ケータイ・リテラシー』 
                 〜子どもたちの携帯電話・インターネットが危ない!〜
                       NTT出版(定価)1,680円 (発売日)2004.12

・ 子供をめぐる情報構造変化、テレビ時代とインターネット時代の子育ての違い
・ 日々の暮らしぶりにおいての大きな違い(例えば、携帯インターネット利用のトラブル相談増加など)
・ IT時代の子育て対策

以上3点について今日はお話します。

ドイツの高校生は、日本みたいに携帯電話を使っていません。海外の国々が子どもの携帯利用に関心をもっています。日本の子どもたちが実験材料になっていると言えます。
 


今の子どもたちはインターネットから情報を得ています。従来は、子どもに見せたくない情報は防げられました。ところがパーソナルメディアの登場によって変わってきました。有害情報の発信が誰にも知られずにダイレクトに子どもに届いてしまう。そこには、迂回チャンネルの形成があります。それが非常に問題になっています。子どもたちを誘い込むインターネット上の遊び場の増加と発達やインターネット上の遊び場のリスク(フレーミングなど)、ネット遊びの監視と指導に注意が必要であります。
では我々は今後何をやればよいのかと言うと、IT時代の子育てモデルダウンとして、子どもの生活指導やしつけが出来る親、子どもに自制力をもってもらうことが重要であります。


携帯電話はただの電話のみではありません。携帯電話はメールや、ネット機能があって、つながりのなかった大人と子どもが、つながることが可能です。ゆえに携帯電話にはマッチング性があります。警察から私は「インターネットは規制できないのか?」と尋ねられたことがありますが、そんなことはできません。インターネットには発信と受信があって、インターネットの情報層には、学びの層とコミュニケーション・遊びの層といたずら・犯罪の層があります。私たち、大人は学びの層だけではなく、犯罪の層もあることを頭に入れておかなければなりません。携帯のメディアはほぼコミュニケーション・遊びの層といたずら・犯罪の層だけであります。ゆえに、子どもたち、一人一人にリテラシーが必要ななってきます。携帯インターネットの欠点について、大人が子どもに教えなければいけません。子どもの時期の、インターネットの影響を子どもの視点から、大人の思惑(学習してもらえるだろう)ではなく、考えなければなりません。


携帯小説から発行された書籍があります(Deep Love あゆの物語)。内容は子どもに対しては有害情報ですが、子どもには人気が出て発行されています。子どもたちは被害者という言い方がされますが、共犯者であると、私は思います。
携帯のインターネットには、出会い系サイトなど(子どもにとっては、打ちでの小槌のようなもので、ふぐ食べたいと出会い系サイトに書き込むと、食べさせてくれる大人がでてきます。)欲望の実現があります。便利で面白い携帯電話は自己中心な心を育てやすいメディアでもあります。
 


携帯インターネットは、子どもにとって、遊びの目的や、子どもの人間関係作りにおいての癒しの目的もある。パーソナルハブメディアであって、メディアとしての都市機能があります。どんなに優れた人口知能だとしても、人工知能には愛情がありません。大人が、子どもに対してできる対策としては「持たせない」ことが一番です。持たせたとしたら約束させ、注意し、助け、指導することが必須であります。
 
プログラム 講 演  15:30〜16:30
「情報化社会の中での教師の役割〜携帯電話と教育現場〜」  

      奈良県立橿原高校 情報科・国語科教諭  小崎誠二先生

高校生と携帯電話について私たち教員が知りたいことについてアンケートを取り、結論として、メディアに理没するのではなく、メディア・リテラシーを育てようとなったのですが…奈良であった殺害事件で、そこの地域は携帯電話を多くの子どもに持たせていた地域(すぐに連絡が取れて安心と言う思いもあって)でしたが…持たせてるから安全ではないと感じた。

アンケート結果で、想定外だったのが、高校の所有していない生徒の共通点がパソコンをよくやっている生徒でした。一番多い通話相手は他学校の友達も多く、学校同士の連携が必要だなとわかりました。
利用の内訳はメールで、携帯Web利用で男子高校生のほぼ全員はアダルト画像を見ていました。携帯電話を所有して変わったことは、家族と仲良くなったなどあげられますが、家族内の会話や連絡のやりとりを、携帯ですましているのは、私自身、仲良くなったと言えるのかと思いました。
依存度は「なかったら困る」の答えが一番多かったです。伝達内容の内訳はメールでは単なるおしゃべりで、通話では、待ち合わせなどが多かったです。

携帯世代のコミュニケーションについては、初めての人にも気軽に番号を教えるなど、気軽に教えると言うことがでてきました。

教育現場での有用性については、カウンセリング的な要素もあると思いました。日頃不登校の生徒で、あまりしゃべらない子なのにメールでは、活発に会話をしたりします。

問題点としては、時間とお金がかかる、コミュニケーション(あらし)、アダルトコンテンツ、デジタルディバイド、カンニングなどあげられます。

教師と生徒と携帯電話について、本音と建前のギャプを埋めるのが大切であります。実態把握が大切であります。
プログラム 意見交換会  16:30〜17:00
講師の先生方とフロアーとで学校における携帯利用の問題について自由に意見を出しあい、各校の現状について積極的な情報の交換をしました。
 

Q: 
インターネット教育で、押し付けではない情報安全教育について、具体的な例をあげてほしい。

A: 子ども向けに4種類のパンフレット・雑誌を作成中。例えば、携帯護身術など。ねらいとしては保護者が勉強をして子どもに教えてあげられるねらい。子どもに対しては、損か得かを教え、次にどういう判断をしたらよいのかを教える。最後に、携帯を持っているあなた自身が自制心、モラルや判断力があるかないかが大切だと伝える。気付かせる。重要なのは自制心と、判断力。(下田博次先生)

Q: 人権問題についての対処について
A: 掲示板に対しては、教師側として普段のコミュニケーション(周りの子に日々、何かあれば、傍観者も含めてブレーキをかけることを伝える。生徒たちや保護者、回りの人間を情報源にする。掲示板を見て自分の名前(先生)を書き込んでみるなど。(小崎誠二先生)

A: 地域にコンテンサツを作ると自制心(ブレーキのかけ方)について、連携が重要である。警察の手をかけないといけないのもある。子ども同士の思春期の関係の中で、親友が犯人だったと言う事例もあるので。(下田博次先生)

Q: 家庭の方に、携帯電話を持たせたがために、安心しきるところがある。また、しつけの問題について。
A: 大人が常識をもつ。子どもが見えないのが問題。携帯電話は非対面でうそをつく特性を育てる面があり、大人も便利に子どもを管理しょうとしてしまう。心配する親の心を育てるのが大切。間接的に子どもの動きを推理する思考方法がこれからはいるし、これからのしつけの方法でもある。(下田博次先生)


■会場で、携帯電話を使ってアンケートとVBB(清教学園の小林先生開発)への書き込みを体験していただきました。
  下田先生は、これを大学生に使ってみたいと興味をもっていただきました。
http://www.coba.cc/bq/
懇親会
いつもの通り、本音のコミュニケーションを築いていただきました。



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